25. マウス左室乳頭筋の細胞内Ca2+と収縮張力に対するアドレナリン刺激の効果

目的:マウスは近年遺伝子改変動物として多く用いられており, 病態の解明に大きな役割を果たしている. しかしながら, マウス心筋の生理学的特性は充分に調べられておらず, また心筋に対して顕著な作用を持っているアドレナリンの作用とその機序は, 他種動物では調べられているが, マウスにおいては充分に調べられていない. そこで我々は, 正常マウス左室乳頭筋標本を使いエクオリン法を用いて,アドレナリン作用時の収縮張力及び細胞内Ca2+濃度変化について検討した. 方法:麻酔下でマウス(C57BL/6, 10weeks)にヘパリン(5,000U/kg)を投与後, 心臓摘出, ランゲンドルフにて還流後左室乳頭...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2002, Vol.117 (6), p.379-379
Hauptverfasser: 平野周太, 草刈洋一郎, 本郷賢一, 栗原敏
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的:マウスは近年遺伝子改変動物として多く用いられており, 病態の解明に大きな役割を果たしている. しかしながら, マウス心筋の生理学的特性は充分に調べられておらず, また心筋に対して顕著な作用を持っているアドレナリンの作用とその機序は, 他種動物では調べられているが, マウスにおいては充分に調べられていない. そこで我々は, 正常マウス左室乳頭筋標本を使いエクオリン法を用いて,アドレナリン作用時の収縮張力及び細胞内Ca2+濃度変化について検討した. 方法:麻酔下でマウス(C57BL/6, 10weeks)にヘパリン(5,000U/kg)を投与後, 心臓摘出, ランゲンドルフにて還流後左室乳頭筋(長さ=2.10mm, 直径=0.6mm)を摘出した. 乳頭筋の一方を固定フックに, 他方を張力トランスデューサーに固定し刺激(0.5Hz)を与えて収縮を誘起した. 細胞内Ca2+濃度変化(CaT)は, エクオリンを細胞内に圧導入し張力と同時に測定した(30℃). また細胞内Ca2+濃度と張力の関係を準定常状態で求めるため, リアノジン(5μM)存在下で10Hz, 6秒間頻回刺激し, 強縮を発生させ細胞内Ca2+濃度と収縮張力との関係を求めた. 溶液はHEPESタイロード氏液を用い, アドレナリンβ受容体刺激にはイソプロテレノール(ISO)を, α受容体刺激にはβブロッカー存在下でフェニレフリン(Phe)を用いた. 結果:Isoは濃度依存性(1, 10, 100nM)に単収縮時のCaTと収縮張力を共に増加させ, CaTと収縮張力の時間経過を共に短縮させた. ISOは強縮時の細胞内Ca2+濃度-張力関係を右方移動させ, 収縮蛋白系のCa2+感受性が低下した. これらの結果は他種動物(ラットなど)と同様であった. Pheは濃度依存性に(1, 10, 100μM)に単収縮時のCaTと収縮張力を減少させたが, 張力の減少率の方が大きかった. Pheは強縮時の細胞内Ca2+濃度-張力関係を右方移動させ, 収縮蛋白系Ca2+感受性の低下が示唆された. この結果は他種動物と異なっていた. このようなPheによる反応はαブロッカー(プラゾシン)で制御された. 結論:マウスにおけるβ受容体刺激の反応は他種動物心室筋と同様であった. 一方, α受容体刺激の反応は他種動物と異なっていた. これらの結果は, マウスの心室筋における細胞内情報伝達系や収縮調節蛋白の性質が他種動物と異なる可能性を示唆している.
ISSN:0375-9172