外傷性MLF症候群の1例

MLF症候群は, 脳幹の傍正中背側部に存在するMLFの障害により, 特徴的な眼球運動障害を呈する症候で, ほとんどの症例が多発性硬化症と脳血管障害が原因であり, 頭部外傷によって生じた本症候群の報告例は極めて少ない. 我々は頭部外傷後に片側性のMLF症候群を呈し, 急速に改善した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は54歳男性. 約2mの高さの脚立より転落し頭頂部を地面に強打, 吐気, 嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された. 来院時, 意識レベルはJCSI-1, 逆行性健忘あるものの, 脳神経所見は眼球運動を含めて異常所見なく, 四肢の運動麻痺, 感覚障害や小脳失調は認めなか...

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Hauptverfasser: 三宅亮, 三村秀毅, 大橋一善, 推津昌司, 木田吉城, 京田茂也, 薄葉輝之, 田村俊一, 小山勉
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:MLF症候群は, 脳幹の傍正中背側部に存在するMLFの障害により, 特徴的な眼球運動障害を呈する症候で, ほとんどの症例が多発性硬化症と脳血管障害が原因であり, 頭部外傷によって生じた本症候群の報告例は極めて少ない. 我々は頭部外傷後に片側性のMLF症候群を呈し, 急速に改善した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は54歳男性. 約2mの高さの脚立より転落し頭頂部を地面に強打, 吐気, 嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された. 来院時, 意識レベルはJCSI-1, 逆行性健忘あるものの, 脳神経所見は眼球運動を含めて異常所見なく, 四肢の運動麻痺, 感覚障害や小脳失調は認めなかった. vital sign正常で, 頭頂部に約1.5cmの挫創を認めた. 画像所見上, 頭蓋単純写真にて骨折なく, 頭部CTでは脚間漕に高吸収域を認め, 出血が疑われた. 第2病日, 歩行時の複視が出現. 左側注視時の右眼の内転障害と左外転眼の外向き眼振を認め, 輻輳は可能であり, 右MLF症候群と診断した. 第2病日の頭部MRIでは脳幹部に明らかな異常を認めず, 第3病日の頭部CTでは, 脚間漕の高吸収域は消失していた. この時点で, 眼球運動障害はほぼ改善し, 軽度の複視を残すのみであり, 第7病日には複視も改善した. 本症例のMLF症候群の発現機序として, 受傷直後でなく翌日にMLF症状が出現していること, 意識障害は軽度であること, 急速に症状が改善していること, 片側性であることなどから, 脳幹の直接損傷による一次性障害は考えにくく, 脳底動脈穿通枝領域の循環不全が原因と考えられた.
ISSN:0375-9172