非開胸下イヌ急性心筋梗塞モデルを用いたbFGFとVEGF併用心膜腔内投与による血管新生療法に関する基礎的検討

I. 緒言 虚血性心疾患の治療法として, 薬物療法, 経皮的冠動脈形成術, 冠動脈バイパスグラフト術が行われている1)2). しかしながら, 臨床上, 依然として血行再建術の適応にならない上に, 薬物療法ではコントロールできない症例は少なからず存在する. そこで新しい治療法としての血管新生療法に期待がよせられている. 虚血性心疾患における血管新生療法とは, 虚血部位における血管新生因子が既存の血管に作用して, ないしは, その部位で増加せしめられた血管新生因子により冠動脈側副血行路を発達させることを利用し, 虚血心筋への血行を薬理学的に再建する新しい方法である3)4). 血管新生療法には細胞増殖因子の投与が試みられており, 血管内皮細胞と血管平滑筋細胞を増殖せしめる線維芽細胞増殖因子basic fibroblast growth factor(bFGF)5), 血管内皮細胞のみを増殖せしめる血管内皮細胞増殖因子vascular endothelial growth factor(VEGF)6), また最近では肝細胞増殖因子hepatocyte growth factor(HGF)7)などが注目されている. そしてこれまでに, 急性あるいは慢性心筋虚血モデル, 末梢虚血モデルなどで, bFGFやVEGFなどの単独投与での血管新生効果が報告されてきた8)9).