進行性の腎不全ならびに中枢神経合併症を併発した溶血性尿毒症症候群に対する1治験例

腸管出血性大腸菌O157:7は, 1984年に散発例が報告されて以来, 我が国でも多くの集団発生の事例が全国各地でみられている. 柏市でも保育園を中心とした集団感染を1996年に経験し, 地方自治体の管理体制ならびに地域の基幹病院の対応などについても, より明らかになった. 今回, 某ハム会社の製品に混入していたO157:7により, 進行性の溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し, 治療に苦慮した8歳女児例を経験した. 患児の多彩な臨床症状ならびに経過は今後のHUSの治療を行う上でも示唆に富むものと考え, 報告する. 症例:8歳女児. 主訴:腹痛, 血便. 現病歴:2001年3月26日腹痛, 下...

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Hauptverfasser: 田嶼朝子, 大島早希子, 伊東健, 出口靖, 伊従秀章, 和田靖之, 藤沢康司, 久保政勝, 小倉誠, 岩永伸也, 木村靖夫, 涌井好二, 岩谷理恵子, 川崎淳一, 中村元彦
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:腸管出血性大腸菌O157:7は, 1984年に散発例が報告されて以来, 我が国でも多くの集団発生の事例が全国各地でみられている. 柏市でも保育園を中心とした集団感染を1996年に経験し, 地方自治体の管理体制ならびに地域の基幹病院の対応などについても, より明らかになった. 今回, 某ハム会社の製品に混入していたO157:7により, 進行性の溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し, 治療に苦慮した8歳女児例を経験した. 患児の多彩な臨床症状ならびに経過は今後のHUSの治療を行う上でも示唆に富むものと考え, 報告する. 症例:8歳女児. 主訴:腹痛, 血便. 現病歴:2001年3月26日腹痛, 下痢が出現, その後28日には血便がみられたため当科紹介入院. 食事歴としては3月20日牛肉のタタキを食べた. 経過:入院後症状の改善はなく, 3日目に血小板数の低下, 溶血所見を認め, さらに前医での便培養でO157:7が検出され, HUSとしてFFPの投与を開始した. しかし病態は進行性で入院4日目に血漿交換を施行, 翌日には急性腎不全を合併したため血液透析を行った. 入院6日目頃から中枢神経症状も進行し, 難治性の痙攣が出現したため人工呼吸器管理下でmidazolam, thiamylalの持続投与を行い, さらに持続血液透析を開始した. その後長期にわたり持続血液透析を行ったところ, 経過は順調となり入院25日目透析より離脱可能となった. 現在意識レベルも含めた全身状態は, 著しく改善傾向にある. 結語:本症例は, 発病後数日間で進行性の増悪をきたした. 発症早期より治療を開始したが, 治療抵抗性を示し, 経過中に中枢神経合併症も併発し, 重篤化した. 小児期のHUSでは出血傾向が強く, 年齢特異性もあるため, 継続して腎不全に対する透析を行うことは困難である. しかし, 今回の経験により, 積極的に治療を行っていくことに意義があると考えられた.
ISSN:0375-9172