観血的動脈血圧測定システムに対する電磁波の影響について

目的：ICU内は種々の医療機器があり電磁波環境の面では極めて複雑な状況である. しかも当院は立地条件として東京タワーに隣接しており電磁波の影響を受けやすい状況にある. このような状況下で当院ICU内で観血的動脈血圧測定を行っていたところ急にゼロ点が変動し, 正しい血圧測定が不可能になった症例が続いた. そこで実際に電磁波が現在使用している観血的動脈血圧測定システムに影響をあたえるかどうかを調べてみた. 方法：電波暗室内に放射電磁界アンテナ(26-80MHz)および観血的動脈血圧測定システムを設置して放射電磁界イミュニティ試験を行った. 1)標準状態で上記の周波数の電磁波の影響を調べた. 2)圧力モニタリングキットをアルミ箔でシールドし電磁波の影響を調べた. 3)圧力モニタリングキットとディスポコードをアルミ箔でシールドして電磁波の影響を調べた. 4)圧力モニタリングキットとディスポコードをシールドチューブでシールドして電磁波の影響を調べた. 結果：1)34-65MHzの電磁波(垂直偏波)によりゼロ点の変動を認めた. 2)アルミ箔によるシールド効果は認められなかった. 3)アルミ箔によるシールド効果が若干認められた. これにより影響を受けているのはディスポコードの可能性が高くなった. 4)シールドチューブにより電磁波の影響はほぼ完全にシールドされた. 結論：今回の実験では実際にICU内で起こったことが電磁波が原因であるとは断定できない. しかし34-65MHzの身近な周波数帯の電磁波が観血的動脈血圧測定-システムに影響を与える可能性のあることがはっきりした.