マウス心室筋の細胞内Caと収縮に対する細胞内アシドーシスの効果

目的:心筋の収縮は細胞内Ca濃度変化により調節されている. 心筋が虚血などに陥った時には著しい収縮力の低下と細胞内Ca調節機構の破綻を生ずることが報告されている. これまではラットやフェレットなどの心室筋を対象として実験が行われてきた. 最近, 分子生物学ではマウスを用いて遺伝子改変を行い, 遺伝子と生理機能の関係を調べる研究が進行している. しかし, マウスの心筋の生理学的特性や病態時における心筋の収縮機能は十分に調べられていない. 我々はエクオリン法を用いてマウス乳頭筋の細胞内Ca濃度と収縮に対するアシドーシスの影響を調べた. 方法:麻酔下でマウス(C57BL/6, 6weeks)から心臓...

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Hauptverfasser: 宇高潤, 草刈洋一郎, 平野周太, 本郷賢一, 栗原敏
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的:心筋の収縮は細胞内Ca濃度変化により調節されている. 心筋が虚血などに陥った時には著しい収縮力の低下と細胞内Ca調節機構の破綻を生ずることが報告されている. これまではラットやフェレットなどの心室筋を対象として実験が行われてきた. 最近, 分子生物学ではマウスを用いて遺伝子改変を行い, 遺伝子と生理機能の関係を調べる研究が進行している. しかし, マウスの心筋の生理学的特性や病態時における心筋の収縮機能は十分に調べられていない. 我々はエクオリン法を用いてマウス乳頭筋の細胞内Ca濃度と収縮に対するアシドーシスの影響を調べた. 方法:麻酔下でマウス(C57BL/6, 6weeks)から心臓摘出後, ランゲルドルフ法にて灌流, 左室乳頭筋を摘出した. 乳頭筋を, 張力測定用トランスデューサーと固定フックに装着し, 正常タイロード氏(5%CO2ガス混和)溶液中で電気刺激を与えて収縮を誘起した(2Hz). Ca感受性発光蛋白エクオリンを乳頭筋表層細胞に圧注入し, 収縮, 弛緩中における細胞内Ca濃度変化(Caトランジェント)と, 張力を同時に記録した(30℃). 正常液は5%CO2ガス, 酸性液は15%CO2ガスをタイロード氏液に混和し, 作成した. 結果:アシドーシスにて張力は減弱したが, Caトランジェントは増加した. アシドーシスから正常に戻した直後は, Caトランジェントはアシドーシス中と同様に高値のままであったが, 張力は, 酸性液作用前のコントロールをこえて増大した. またCaトランジェントの時間経過はアシドーシス下で延長した. 正常液に戻すと酸性液作用前に比べ短縮した. 張力の時間経過はアシドーシスで短縮し, 正常液に戻すとコントロールに比べ延長した. 結論:エクオリン法によってマウス乳頭筋の細胞内Ca濃度と収縮張力を同時測定した. アシドーシスでは細胞内Ca濃度と張力は相反する変化を示し, 収縮蛋白系のCa応答性が低下していることが考えられた. 細胞内が酸性になると収縮蛋白のCa親和性が低下し, かつ筋小胞体のCa取り込みが抑制されるので, 収縮時間の短縮とCa信号下降相の延長が見られたものと考えられる. 今回と同様の実験を収縮調節蛋白や細胞内Caの濃度調節に関係しているCa調節系の遺伝子改変動物心筋で行うことにより, 病態時における収縮調節蛋白や細胞内Ca濃度調節の機能的変化を遺伝子レベルで理解できることが期待される.
ISSN:0375-9172