30. MPTP処理マウス黒質におけるnucleosomal DNA fragmentation

目的 : MPTPは選択的に黒質ドパミン細胞を障害することが知られている. その機序として, ミトコンドリアの電子伝達系を阻害しエネルギー枯渇を引き起こすほか, フリーラジカルによる酸化的ストレスによる障害や, 細胞カルシウムイオンのホメオスタシス撹乱による細胞機能障害を誘発することが報告されている. 近年, 培養細胞を用いた実験系にてアポトーシスの関与が示されたが, in vivoの実験系では, その関与は確定されていない. 今回, MPTP投与マウス黒質神経細胞の細胞死を分子病理学的に検索し, アポトーシスの関与を考察した. 方法 : C57BL/6マウスを対象とし, MPTP 20mg/...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2000, Vol.115 (6), p.636-636
Hauptverfasser: 福田隆浩, 藤ヶ崎純子, 田中順一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:目的 : MPTPは選択的に黒質ドパミン細胞を障害することが知られている. その機序として, ミトコンドリアの電子伝達系を阻害しエネルギー枯渇を引き起こすほか, フリーラジカルによる酸化的ストレスによる障害や, 細胞カルシウムイオンのホメオスタシス撹乱による細胞機能障害を誘発することが報告されている. 近年, 培養細胞を用いた実験系にてアポトーシスの関与が示されたが, in vivoの実験系では, その関与は確定されていない. 今回, MPTP投与マウス黒質神経細胞の細胞死を分子病理学的に検索し, アポトーシスの関与を考察した. 方法 : C57BL/6マウスを対象とし, MPTP 20mg/kgを1日3回2日間腹腔内投与. 投与前, MPTP投与第1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 9, 12, 16日目に, 中脳を取り出し, 光顕的に4%パラホルムアルデヒド固定切片を用い, 一般染色および各種免疫組織化学(tyrosine hydroxylase, GFAP)とTUNEL法にて黒質を観察した. 同様に摘出した中脳を2.5%グルタールアルデヒドにて固定し, 黒質神経細胞の超微細構造変化を観察した. また, nucleosomal DNA fragmentationの確認のため, 黒質より抽出したDNAを, igation-mediated polymerase chain reaction法にて増幅したPCR産物を電気泳動にて検索した. 結果と考察 : MPTP投与後2日目より黒質ドパミン細胞の減少と反応性グリアの増生が出現, 第4日目にドパミン細胞の減少は顕著となり以後持続した. 超微細形態学的に, 第4日目の黒質に, 膨化したミトコンドリアや小胞体および空胞の存在するcytoplasmic neuron deathや, 核膜辺縁部のクロマチン凝縮, 核および胞体の縮小したapoptosis-like neuron deathが混在した. TUNEL法にてDNA断片化を示す細胞が第3日目より黒質全体に出現, 第4日目に最多となり, 第5日目より黒質内側に少数散見される程度に減少した. Nuclesomal DNA Ladderは, TUNEL法でDNA断片化細胞が多数出現する時期に同期して認められ, MPTP投与により黒質神経細胞にヌクレオソームの整数倍のDNA断片化が誘導されることが確認された. 結論 : MPTPはミトコンドリア電子伝達系に作用しATP産生を障害することにより細胞に懐死を導くだけでなく, マウス黒質神経細胞にnucleosomal DNA fragmentationを介した細胞死を誘導する.
ISSN:0375-9172