D2. 老年期痴呆の介護-痴呆症状の改善のみられた症例についての考察

今回私達は, 老年期痴呆の介護において, 痴呆症状の改善をみた症例を経験したので報告し, 若干の考察を加えた. 目的:痴呆の著しい高齢者に対し職員の対応・関わりが精神の安定にどのように影響を及ぼしたかを検討した. 対象:施設開設から1年半の間, 3ヵ月以上の入所者のうち入所時の痴呆自立度III・IV, 寝たきり度A1・A2の症例26名. 男7名, 女19名. 平均年齢83.3歳. 方法:寝たきり度, 痴呆自立度, 見当識障害, HDS-R, ADL, 表情, 問題行動の変化を検討した. 痴呆自立度・寝たきり度は1ランク以上, HDS-Rは5点以上を改善とした. ADLはおもに更衣・排泄面の改善...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 2000, Vol.115 (4), p.521-522
Hauptverfasser: 下路永利子, 小倉佳澄, 磯岡チズ子, 飯塚哲夫, 渡邉禮次郎
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:今回私達は, 老年期痴呆の介護において, 痴呆症状の改善をみた症例を経験したので報告し, 若干の考察を加えた. 目的:痴呆の著しい高齢者に対し職員の対応・関わりが精神の安定にどのように影響を及ぼしたかを検討した. 対象:施設開設から1年半の間, 3ヵ月以上の入所者のうち入所時の痴呆自立度III・IV, 寝たきり度A1・A2の症例26名. 男7名, 女19名. 平均年齢83.3歳. 方法:寝たきり度, 痴呆自立度, 見当識障害, HDS-R, ADL, 表情, 問題行動の変化を検討した. 痴呆自立度・寝たきり度は1ランク以上, HDS-Rは5点以上を改善とした. ADLはおもに更衣・排泄面の改善を評価した. 結果:HDS-Rは4例, 見当識障害は6例に改善を認めた. 全般改善度は14例, とくに表情の改善は17例, 更衣・排泄の改善は10例であった. 問題行動では俳徊・放尿・弄便の改善が目立った. 濫集傾向・不潔行為の改善は著しくなかった. 悪化の2例は痴呆重症例であった. 考察:痴呆の中核症状である知的機能の改善は顕著ではないが, 情緒の安定によると思われる症状の改善はかなり目立った. 心に寄り添うケア, 信頼関係の構築が最も重要であることを痛感した. 効果のあったと思われる対応としては, (1)以前より着慣れた洋服(好きな柄)を着てもらい, 精神的安定を図る. (2)席・居室・トイレに大きな表示で場所の見当識障害の改善を目指す. (3)レクリエーションに昔流行った遊びや歌を取り入れることで過去の自分を思い出してもらう. (4)行動を一緒に繰り返すことにより信頼関係をつくり, 各個人の求めていることを知る. (5)集団生活で役割分担をしてもらい自己の存在の必要性を自覚させる. (6)各人の行動パターンをとらえ, 声掛け誘導を行い問題行動に対応する. 今後も各人に適した介護を求め実施することにより, さらに良い痴呆の介護を目指して行きたい.
ISSN:0375-9172