C7. 気道壁の著明な肥厚を呈したサルコイドーシスの1例

症例:51歳, 男性, 理髪師. 主訴:呼吸困難, 咳嗽. 家族歴:特記すべきことなし. 既往歴:19歳慢性副鼻腔炎, 40歳鼠径ヘルニア, 喫煙歴なし. 現病歴:1988年頃より咳嗽が出現, 1998年3月頃より症状の増強と右視力障害が認められたため, 同年4月20日に当科を受診. 各種の精査にて, 気管, 気管支壁の著明な肥厚と内腔の狭窄が認められるも確定診断には至らず, 国立がんセンター東病院に精査を依頼. 同年8月17日, 同院での頸部気管の生検にてサルコイドーシスを疑わせる所見が得られたため, 同年9月1日精査加療目的にて再度当科入院となる. 現症:身長164cm, 体重57kg,...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 1999, Vol.114 (4), p.193-194
Hauptverfasser: 鶴崎哲士, 吉村和彦, 池田真仁, 矢野平一, 斉藤義弘, 小林正之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例:51歳, 男性, 理髪師. 主訴:呼吸困難, 咳嗽. 家族歴:特記すべきことなし. 既往歴:19歳慢性副鼻腔炎, 40歳鼠径ヘルニア, 喫煙歴なし. 現病歴:1988年頃より咳嗽が出現, 1998年3月頃より症状の増強と右視力障害が認められたため, 同年4月20日に当科を受診. 各種の精査にて, 気管, 気管支壁の著明な肥厚と内腔の狭窄が認められるも確定診断には至らず, 国立がんセンター東病院に精査を依頼. 同年8月17日, 同院での頸部気管の生検にてサルコイドーシスを疑わせる所見が得られたため, 同年9月1日精査加療目的にて再度当科入院となる. 現症:身長164cm, 体重57kg, 血圧120/90mH, 脈拍80/分・整, 体温36.7℃, ぱち状指なし, 心雑音なし, 肺野に湿性ラ音を聴取, 頸部・腋窩・鼠径リンパ節の腫脹なし, 神経学的にも異常所見なし, 皮疹なし. 検査所見:(血液所見)WBC9200/μl, RBC473万/μl, Hb15.5g/dl, Ht45.1%, Plt29.4万/μl, GOT21IU/l, GPT16IU/l, LDH229IU/l, T-Bil0.6mg/dl, CK121IU/l, TP7.2g/dl, alb4.3g/dl, BUN11mg/dl, Cre0.7mg/dl, UA5.9mg/dl, Na147mmol/l, K4.3mmol/l, Cl102mmol/l, Ca9.9mg/dl, P4.1mg/dl, ESR25mm/hr, CRP0.6mg/dl, ACE25.7IU/l, リゾチーム7.4μg/ml, 可溶性IL-2レセプター446U/ml, BGA:pH7.386, PaCO2 47.5mmHg, PaO2 86.7mmHg, HCO3-27.8mmmol/l, BE2.5mmmol/l, SaO2 95.5%, 呼吸機能検査:%肺活量49.9%, 1秒率46.8%, ツベルクリン反応:陽性. (心電図)洞調律で軸偏位を伴わない不完全右脚ブロック. (胸部X線所見)気管内腔の狭小化と, 気管支壁の肥厚を疑わせる線状の陰影を認める. (胸部CT所見)気管から末梢に至る気管壁の肥厚を認める. (気管支鏡)気管支内腔は, 左右気管支ともに粘膜の浮腫, 肥厚が著明, 強度の狭窄が認める. 中葉, 舌区の気管支肺胞洗浄は, 狭窄のため施行できず, 気管分岐部にて生検を施行するも, 病理細胞診ではclass I. (Gaシンチ)縦隔に軽度の集積が見られる以外に, 肺野も含めて異常集積を認めず. (頸部気管生検病理標本)壊死のみられない類上皮細胞肉芽腫を認める. (眼症状)当院眼科にて右ぶどう膜炎と診断されている. 入院後の経過:本症例は, 胸郭内病変として, 胸部X線・CTにて気管壁内腔の狭小化, 頸部気管の生検より非乾酪性類上皮肉芽腫, 肺機能所見(%VC・PaO2の低下)を認め, 胸郭外病変として, 眼病変(霧目・ぶどう膜炎), 心病変(伝導障害)を認める. 検査所見としては血清ACEの上昇を認める. 除外規定として, 悪性リンパ腫, 肺癌(癌性リンパ管症), 結核, ベリリウム肺, じん肺を通常の検索では認めず. 以上より, 本症例をサルコイドーシスと診断, 肺機能障害に伴った自覚症状を認めるため, ステロイド薬の適応と考え, プレドニン50mg/日を投与開始とした. 投与開始後, 自覚症状の改善を認め, 血清ACE値も11.5IU/lと正常範囲内となり, BGAも, PaCO2 41.4mmHg, PaO2 81.3mmHg, SaO2 95.4%と改善, スパイログラム上も肺活量3.22l, %肺活量89%, 1秒率27.5%と改善を認めた. その後プレドニンを20mg/日まで漸減したが, 症状の再燃は認められていない. まとめ:一般にサルコイドーシスは, 中年以降の女性を除き自然治癒する症例がほとんどである. 本症例の場合, 入院中の経過からは, ステロイドにて臨床所見, 検査所見ともに改善していると考えられた. しかし, 認められる画像所見は著明な気道病変のみで, 同様の症例は調べうる範囲では報告がなく, 今後の経過・予後の予測は大変困難であると思われる.
ISSN:0375-9172