1-2. 右大腿切断に左大腿・下腿開放骨折を伴った重症外傷症例における早期歩行訓練の試み

交通事故により両下肢に重症外傷を負った症例に対して装具と義足を用いて早期歩行訓練を試みた. 症例は28歳の女性で, 平成10年2月7日, 交通事故にて右下肢高度挫滅および左大腿・下腿開放骨折を受傷した. 直ちに当院救急診療部を受診し, 受傷後約6時間で整形外科において右大腿切断術ならびに左大腿骨, 下腿骨の観血的整復固定術が施行された. 術後4週で左大腿骨を固定したプレートの脱転を認めたためこれを抜去し, キュンチャー髄内釘による再固定術が施行された. 理学療法は, まず右大腿創部が治癒した3週目から断端訓練を開始, 6週目に義足の採型を側臥位にて実施した. 8週目より義足を装着した右下肢のみ...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 1999, Vol.114 (2), p.109-110
Hauptverfasser: 村松正文, 阿部幸一郎, 臼井友一, 石井美紀, 坂本千寿, 市村智美, 井原幸恵, 藤本英明, 南尾美智子, 大谷卓也, 大橋栄
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:交通事故により両下肢に重症外傷を負った症例に対して装具と義足を用いて早期歩行訓練を試みた. 症例は28歳の女性で, 平成10年2月7日, 交通事故にて右下肢高度挫滅および左大腿・下腿開放骨折を受傷した. 直ちに当院救急診療部を受診し, 受傷後約6時間で整形外科において右大腿切断術ならびに左大腿骨, 下腿骨の観血的整復固定術が施行された. 術後4週で左大腿骨を固定したプレートの脱転を認めたためこれを抜去し, キュンチャー髄内釘による再固定術が施行された. 理学療法は, まず右大腿創部が治癒した3週目から断端訓練を開始, 6週目に義足の採型を側臥位にて実施した. 8週目より義足を装着した右下肢のみ荷重した状態で平行棒内起立, 歩行訓練を開始した. 一方, 左下肢に対しては, 2週目より関節可動域訓練を開始した. 9週目に骨折の治癒傾向を認めたため, 直ちに坐骨支持免荷装具を採型し, 装具が完成した10週目より右に義足, 左に装具を装着して松葉杖歩行訓練を開始した. 18週目より左下肢に3分の1荷重が許可され, 21週目で左下肢全荷重となった. 22週目の現在, 右大腿義足と両杖を使用して歩行が安定し, 階段昇降が可能となったため自宅退院となった. 一般に, 一側の大腿切断, 大腿および下腿の開放骨折は重症外傷であり, リハビリには長期間を要する. これらを同時に受傷した本症例において, 義足歩行による社会復帰というゴールを早期に達成するため多くの工夫を要した. (1)左下肢の骨折治癒を待つことなく義足訓練を開始. (2)左下肢の骨折治癒が始まった時点で直ちに坐骨支持免荷装具を作成し, 両下肢による歩行訓練を開始. (3)義足は, 着脱の容易な差し込み式ソケットを選択して早期に使用を自立させた. また, 初期の義足の膝関節は安定性の高い伸展位固定式とした. あるいは, 当初, 義足を短めに調整し振り出しを容易にした点などである. 積極的にリハビリを進めた結果, 早期に退院が達成された.
ISSN:0375-9172