15. 小腸原発悪性リンパ腫に合併した特発性アジソン病の1例

特発性アジソン病と悪性リンパ腫を合併した1例を経験した. 他医で小腸悪性リンパ腫によるイレウスの開腹手術後, 全身の色素沈着, 体重減少と強い全身倦怠感のため, 1996年12月当院入院となった65歳男性. 入院時, 血中コルチゾール値は測定感度以下(ACTH1,200pg/ml)であり, アジソン病と診断した. 画像診断では, 副腎の腫大や石灰化等の異常所見は認めなかった. 入院後, 全身倦怠感, 食欲不振, 起立性低血圧が進行, クリーゼの治療に準じ, ハイドロコーチゾンとドーパミン投与を開始したところ, 全身状態は劇的に改善し, ACTHも低下傾向となった. その後経口ハイドロコーチゾン...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 1997, Vol.112 (6), p.756-756
Hauptverfasser: 井坂剛, 牛尼秀樹, 河合文平, 多田圭希, 平本淳, 村上重人, 永山和男, 田中照二
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:特発性アジソン病と悪性リンパ腫を合併した1例を経験した. 他医で小腸悪性リンパ腫によるイレウスの開腹手術後, 全身の色素沈着, 体重減少と強い全身倦怠感のため, 1996年12月当院入院となった65歳男性. 入院時, 血中コルチゾール値は測定感度以下(ACTH1,200pg/ml)であり, アジソン病と診断した. 画像診断では, 副腎の腫大や石灰化等の異常所見は認めなかった. 入院後, 全身倦怠感, 食欲不振, 起立性低血圧が進行, クリーゼの治療に準じ, ハイドロコーチゾンとドーパミン投与を開始したところ, 全身状態は劇的に改善し, ACTHも低下傾向となった. その後経口ハイドロコーチゾンにて全身状態が安定, 外来通院後も体重増加し, 経過順調であった. 1997年4月初旬より腹痛, 発熱が出現し再入院となった. 再入院時, LDH高値と腹部超音波上腫大したリンパ節を多数認めたことから, 悪性リンパ腫の再発と診断した. CHOP療法開始後, 自覚症状, 検査所見ともに改善した. 本邦におけるアジソン病の原因は, 副腎結核が最も多く6割を占め, 次に特発性アジソン病が約3割, 癌の副腎転移等, その他は稀であると報告されている. 我々が調べ得た限り, 悪性リンパ腫とアジソン病の合併は18例の報告があるが, 1例を除き, 副腎へのリンパ腫浸潤が画像上確認されていた. 本症例の場合, 画像上副腎に腫瘤や石灰化を認めないにもかかわらず副腎不全の症状が出現しており, 悪性リンパ腫の副腎浸潤は否定的であった. アジソン病の診断後, ステロイド補充療法により全身状態は著明に改善し, 体重増加と呼応してリンパ腫が再発したことから, 副腎不全による不良な全身状態がリンパ腫の再発を遅延させていた可能性が考えられた.
ISSN:0375-9172