2-1. 悪性リンパ腫との鑑別が困難であった甲状腺小細胞性髄様癌の1例

症例:69歳, 男性, 甲状腺に径5cmの充実性腫瘍を認め精査目的のため入院. 甲状腺機能亢進はないが, 超音波検査より周囲リンパ節腫張, CT上腫瘍が大きいことから悪性腫瘍が疑われ, 甲状腺ABCを施行した. 初回class III, 2回目class V, 悪性リンパ腫は完全には否定できないが, 甲状腺小細胞癌を疑った. 甲状腺亜全摘術およびリンパ節郭清術施行. 組織診で甲状腺小細胞癌と診断され, リンパ節転移を認めた. 細胞所見:術前のABCは2回行われ, 細胞像に若干の違いがみられ判定に苦慮した. 初回には血性背景に小型のリンパ球様の細胞が主体で多数みられた. 核の大小不同は軽度にある...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 1996, Vol.111 (6), p.958-959
Hauptverfasser: 冨山悦子, 歳川伸一, 江間律子, 原田和佳, 河西美知子, 千葉諭, 宍倉有里, 山口裕
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例:69歳, 男性, 甲状腺に径5cmの充実性腫瘍を認め精査目的のため入院. 甲状腺機能亢進はないが, 超音波検査より周囲リンパ節腫張, CT上腫瘍が大きいことから悪性腫瘍が疑われ, 甲状腺ABCを施行した. 初回class III, 2回目class V, 悪性リンパ腫は完全には否定できないが, 甲状腺小細胞癌を疑った. 甲状腺亜全摘術およびリンパ節郭清術施行. 組織診で甲状腺小細胞癌と診断され, リンパ節転移を認めた. 細胞所見:術前のABCは2回行われ, 細胞像に若干の違いがみられ判定に苦慮した. 初回には血性背景に小型のリンパ球様の細胞が主体で多数みられた. 核の大小不同は軽度にあるが, クロマチン増量, 核形不整, 核小体は目立たない. しかし, 単調性に多数みられることからclass III, 悪性リンパ腫は否定できなかった. 2回目も同様のリンパ球様細胞が多数みられた. けれども, その中に上皮性結合を示す細胞集塊がみられ, 核にくびれがない点から小細胞癌が疑われた. 組織所見:ABCと同時に針生検も行われた. 小型リンパ球様細胞が密に増殖し, 所々で胞巣を形成して浸潤を伴う. 免疫染色でCAM(+), EMA(+), LCA(-), L26(-), UCHL1(-)で小細胞癌と診断し, 甲状腺原発か肺などからの転移を考えた. 手術材料でも同様の組織像を示した. グリメリウス染色陽性で傍濾胞細胞(C細胞)由来と考えられた. まとめ:小細胞型髄様癌では悪性リンパ腫との鑑別が最も問題になる. 小細胞癌では, 細胞相互の結合性が緩やかであり, 細胞所見で単調性, 核小体の際立ち, 核のしびれ等の有無が悪性リンパ腫との鑑別点になる. 組織標本で, グリメリウス染色で散在性に陽性細胞がみられ, 上皮細胞マーカーが陽性であり, 最終診断を小細胞型髄様癌とした. C細胞が産生するカルシトニンを免疫組織化学的に証明し, 電顕で胞体内神経内分泌顆粒を観察することも最終診断に重要である.
ISSN:0375-9172