21. 癌化学療法における口内炎対策 ―含嗽の効果について

化学療法の副作用である口内炎の発生頻度は約40%と言われ, 発生しやすい化学療法剤は(1)代謝拮抗剤の5-FU, MTX(2)植物性アルカロイドのラステッド(3)抗癌性抗生物質のアドリアシンがあげられ, 5-FU併用療法では57%, MACOPBでは75%に発症すると報告されている. 口内炎の発生機序は第一に化学療法剤投与により生体内にフリーラジカルが生じ, ラジカルは安定性を求め細胞膜に一番豊富に存在している不飽和脂肪酸と反応し, 過酸化脂質となり膜障害を引き起こす直接作用と, 骨髄抑制による生体防御機能の低下から感染症として発症する二次的作用があり, フリーラジカルと細菌感染を防ぐため含嗽...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 1995, Vol.110 (3), p.511-511
Hauptverfasser: 山下正和, 阿部恵子, 真柄久美子, 桜田浩美, 吉岡久美子, 吉田陽子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:化学療法の副作用である口内炎の発生頻度は約40%と言われ, 発生しやすい化学療法剤は(1)代謝拮抗剤の5-FU, MTX(2)植物性アルカロイドのラステッド(3)抗癌性抗生物質のアドリアシンがあげられ, 5-FU併用療法では57%, MACOPBでは75%に発症すると報告されている. 口内炎の発生機序は第一に化学療法剤投与により生体内にフリーラジカルが生じ, ラジカルは安定性を求め細胞膜に一番豊富に存在している不飽和脂肪酸と反応し, 過酸化脂質となり膜障害を引き起こす直接作用と, 骨髄抑制による生体防御機能の低下から感染症として発症する二次的作用があり, フリーラジカルと細菌感染を防ぐため含嗽が必要となる. イソジンガーグル・オラドール含嗽水・アロプリノール含嗽水の3種類の含嗽水を併用し, 化学療法剤投与1時間前に1回, 投与後1日4~6回実施した含嗽群は10年中9例(90%)が口内炎は発生せず, 1例だけがGrade 1の疼痛・紅斑を生じている. 発生率は10%である. また予防的に含嗽を始める前に化学療法を受けた非含嗽群は, 8例(61.5%)が発生している. 程度ではGrade 2の紅斑・潰瘍, 食事摂取可能の状態が5例と一番多く, 最も重症であるGrade 4の食事摂取不能が2例あった. このことにより, 口内炎発生は化学療法を施行前に含嗽をすることで明らかに口内炎予防に役立っている. 口内炎は対処療法で改善するまでには, 少なくとも10~14日を要すると言われ, その間痛みで食事が取れなくなり全身状態が悪化する例も少なくない. また, 抗癌剤を使用することにより味覚変化が起こり, さっぱりしたものへ嗜好が移るようである. そのことをふまえて, 食事内容の検討が必要になってくる. 口内炎の予防には患者のQOLを高めるためにも患者中心に医師, 看護婦, 薬剤師, 栄養士が協力しあってよりよいケアが提供できるように続けていきたい.
ISSN:0375-9172