手根骨スペーサーの素材に関する実験的研究 ―腱と皮膚の比較

「I. 緒言」Kienbock病(月状骨軟化症)は, 手関節に疼痛を発する代表的な疾患で, Kienbock(1910)の報告1)後, その病因の解明ならびに治療法に関して数多くの研究が報告されている. 1970年, Carrollらは, 壊死に陥った月状骨を摘出し, その空隙に球状に形成した遊離長掌筋腱を挿入する方法(以下, 腱球置換術)を報告しているが, 本法は, 末期Kienbock病で関節症に移行し強い疼痛を訴える症例に対しても比較的安定した除痛効果が期待できるとして本邦でも高く評価されている2)-4). しかし, 著者の経験では月状骨摘出後の空隙は予想以上に大きく, 一側の遊離長掌筋...

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Veröffentlicht in:東京慈恵会医科大学雑誌 1995, Vol.110 (1), p.33-41
Hauptverfasser: 金子信之, 室田景久
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「I. 緒言」Kienbock病(月状骨軟化症)は, 手関節に疼痛を発する代表的な疾患で, Kienbock(1910)の報告1)後, その病因の解明ならびに治療法に関して数多くの研究が報告されている. 1970年, Carrollらは, 壊死に陥った月状骨を摘出し, その空隙に球状に形成した遊離長掌筋腱を挿入する方法(以下, 腱球置換術)を報告しているが, 本法は, 末期Kienbock病で関節症に移行し強い疼痛を訴える症例に対しても比較的安定した除痛効果が期待できるとして本邦でも高く評価されている2)-4). しかし, 著者の経験では月状骨摘出後の空隙は予想以上に大きく, 一側の遊離長掌筋腱を用いて作製した難球のみでここを充填することはほとんど不可能である. そこで著者は, 本法における月状骨摘出後の補填材料として, 採取が比較的容易で供与部の機能的損失が少ない皮膚(真皮)組織を腱の代わりに用いる方法(以下, 皮膚球置換術)を考案, 家兎の手関節を用いて動物実験を行い, 皮膚(真皮)組織が本法における補填材料として有用か否かを検討し, さらに腱球置換術の成績と比較検討したので報告する.
ISSN:0375-9172