R2-4 体外循環終了後に回路内血栓を認めた一例

【はじめに】体外循環(CPB)回路内血栓は重篤な障害を起こす危険性を含んでいる. 要因として様々な報告がなされているが, 不明なことも少なくない. 今回, CPB終了後に回路内血栓を認めた症例を経験したので報告する. 【症例】52歳男性. 大動脈弁逆流, 感染性心内膜炎により, 大動脈弁置換術を施行した. 【経過】抗凝固はヘパリンを用いACTを400秒以上維持してCPBを2時間8分施行した. MUF後, 酢酸リンゲル液で置換し希釈された回路残血を回収したところ, 人工肺と熱交換器, 動脈フィルターに多量の血栓を認め, 回路の再利用は困難であった. また回路回収後の吸引回路と心筋保護回路に少量の...

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Veröffentlicht in:体外循環技術 2008, Vol.35 (3), p.287-287
Hauptverfasser: 立川洋輝, 西垣孝行, 高橋裕三, 小川浩司, 四井田英樹, 吉田幸太郎, 西岡宏, 山中泰弘, 峠崎純一, 松本泰史, 石野直明, 染川将太, 林輝行
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:【はじめに】体外循環(CPB)回路内血栓は重篤な障害を起こす危険性を含んでいる. 要因として様々な報告がなされているが, 不明なことも少なくない. 今回, CPB終了後に回路内血栓を認めた症例を経験したので報告する. 【症例】52歳男性. 大動脈弁逆流, 感染性心内膜炎により, 大動脈弁置換術を施行した. 【経過】抗凝固はヘパリンを用いACTを400秒以上維持してCPBを2時間8分施行した. MUF後, 酢酸リンゲル液で置換し希釈された回路残血を回収したところ, 人工肺と熱交換器, 動脈フィルターに多量の血栓を認め, 回路の再利用は困難であった. また回路回収後の吸引回路と心筋保護回路に少量の血栓を認めた. 術後6日目にヘパリン起因性血小板減少症(HIT)抗体が陽性と判明し, HITの確定診断が得られた. 【考察および結語】血栓が付着した人工肺と動脈フィルターを走査型電子顕微鏡で観察した結果, エチノサイト化した赤血球の凝集塊を認めた. しかしCPB離脱後, 酸素ガスは停止しており血栓形成時の血液ガスはpHが7.41であったこと, さらに吸引回路と心筋保護回路に少量の血栓を認めたことから, 過度のアルカローシスが原因で生じたエチノサイト化ではないと考える. また術後HIT抗体が陽性であったことに加え, 術前に一時期血小板減少兆候を示していたことから, CPB中にHITを発症していた可能性が示唆された. しかしながら明確な原因は不明であり, 安全性を維持するためには, 常時血栓化する可能性があることを念頭に置き, CPB終了後も速やかに再CPBに備えることが重要であると考える.
ISSN:0912-2664