R2-1 ヘパリン起因性血小板減少症II型(HIT II型)患者に対してアルガトロバンを使用して体外循環下に開心術を施行した1症例

【はじめに】ヘパリン起因性血小板減少症II型(HIT II型)を伴う大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(ASR)僧帽弁閉鎖不全症(MR)三尖弁閉鎖不全症(TR)患者に対して, 抗凝固剤としてアルガトロバンを使用して体外循環下に開心術を施行した1症例を経験したので報告する. 【症例】84歳男性, 平成19年10月から11月までASRによる心不全にて近医入院加療した. 一度退院するも退院直後から呼吸困難などの症状が出現し, 再入院となった. 腎不全も合併して持続的血液透析濾過(CHDF)施行した際, 回路内に血栓を認めて施行困難になり, ヘパリンの増量を試みたが, 効果無く, ヘパリンからメシル酸ナファモス...

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Veröffentlicht in:体外循環技術 2008, Vol.35 (3), p.285-285
Hauptverfasser: 草野信悟, 三輪高史, 辻克信, 河野智, 藤原靖恵, 洞井和彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【はじめに】ヘパリン起因性血小板減少症II型(HIT II型)を伴う大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(ASR)僧帽弁閉鎖不全症(MR)三尖弁閉鎖不全症(TR)患者に対して, 抗凝固剤としてアルガトロバンを使用して体外循環下に開心術を施行した1症例を経験したので報告する. 【症例】84歳男性, 平成19年10月から11月までASRによる心不全にて近医入院加療した. 一度退院するも退院直後から呼吸困難などの症状が出現し, 再入院となった. 腎不全も合併して持続的血液透析濾過(CHDF)施行した際, 回路内に血栓を認めて施行困難になり, ヘパリンの増量を試みたが, 効果無く, ヘパリンからメシル酸ナファモスタット(フサン)に変更したところ回路内の凝固の改善を得られた. その後血小板の顕著な減少も認められてHITを, 疑われ, 平成20年1月手術目的で当院へ転院後に精査にてHITと診断された. ASR, MR, TRに対して, 抗凝固剤としてアルガトロバンを使用して体外循環下に開心術を施行することとなった. 【方法】人工心肺装置:STOCKERT SIIIリザーバー:泉工医科工業HVR-4NF, 遠心ポンプ:COBE revolution人工肺:泉工医科工業HPO-23H-C, 動脈フィルター:PALL AL8人工心肺回路:泉工医科工業製市立長浜病院中人用ノンコーティング回路動脈カニューレ:DLP20Fr, 静脈カニューレ:(SVC)medtronic69328(パシフィコ28Fr)(IVC)Edwards LifesciencesTF-034-L(ストレート34Fr)以上すべてノンコーティングにて対処した. 人工心肺回路は遠心ポンプ出口より人工肺の入口で10×10×10mmのYコネクターで分岐させてバイパス回路を作り途中にAir抜きポートを組み込み, 人工肺交換時に敏速に対応出来るようにしておいた. 【結果】人工心肺時間217分, 大動脈遮断時間158分であった. アルガトロバンを使用して人工心肺回路の血栓は認めなかった. しかしカルディオトミーリザーバー(CTR)および自己血回収装置のリザーバーに血栓形成を認め交換をした. 【考察】当施設ではアルガトロバンの使用により体外循環下に開心術を施行できた. 人工心肺回路, 人工肺, 静脈リザーバー, 遠心ポンプ, 動脈フィルターには血栓形成を認めなかった. しかし, 今回, CTRにより人工心肺回路の凝固は回避できたが, CTRと自己血回収装置リザーバーを合わせると600mlほど失血してしまった. この原因として, CTRおよび自己血回収装置リザーバーの凝固はACTが300秒以下であるにも関わらず血液を吸引したことと, ヘパリンよりアルガトロバンは抗凝固作用の出現に時間を要するためと考えられた. そのため, 早めのアルガトロバン投与が必要と考えられた. また以前に, アルガトロバンを使用した場合, ACTが延長していても空気と接触することにより, 血栓形成されるという報告があった. このことから開放型リザーバー(空気と接触する)を使用するときは, アルガトロバンを持続投与することが必要と思われた. ただ, CTRを交換した時には既にACTが300秒を超えていたことから, 単にCTRの中にアルガトロバンを持続投与すれば凝固しないかは不明である. ACTが200秒以下に正常化するのに8時間近くかかったこと, 体外循環中ACTが一時1200秒以上に達したことを考えると, アルガトロバンの量, 投与方法を今後さらに検討していかなければならないと思われた. 【結論】1. ACTは最低300秒以上でカニュレーションおよび人工心肺を開始する. 2. 自己血回収装置, 脱血ライン, CTRにはアルガトロバンを持続投与する. 3. 人工心肺を開始するまでは単体のCTRを使用してカニュレーション時の吸引血を静脈リザーバーに入れないようにする(空気と触れる事により血栓を形成する危険性がある)
ISSN:0912-2664