R1-1 人工肺流入部の圧力のみが上昇し心停止中に人工肺の交換を余儀なくされた症例と安全対策
【目的】体外循環中に人工肺流入部側の圧力のみが異常に上昇して体外循環の維持が困難になり, 人工肺の交換を余儀なくされた症例を報告する. 【症例】29歳, 男性. 心室中隔欠損症と活動期感染性心内膜炎およびそれに起因する肺炎に対して, 心室中隔欠損閉鎖と疣腫切除を行った. 【方法】ACT400秒以上を確認した後, 体外循環を開始した. 開始後5分のACTは411秒で, ヘパリン5000単位を追加した. ガス交換能は正常であった. その後, 人工肺流入部の圧力が上昇し始め, さらにヘパリン5000単位を追加して血液ガス分析を行ったがやはり正常であった. 心内操作開始後, 流入部圧が500mmHgを...
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Veröffentlicht in: | 体外循環技術 2008, Vol.35 (3), p.282-282 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 【目的】体外循環中に人工肺流入部側の圧力のみが異常に上昇して体外循環の維持が困難になり, 人工肺の交換を余儀なくされた症例を報告する. 【症例】29歳, 男性. 心室中隔欠損症と活動期感染性心内膜炎およびそれに起因する肺炎に対して, 心室中隔欠損閉鎖と疣腫切除を行った. 【方法】ACT400秒以上を確認した後, 体外循環を開始した. 開始後5分のACTは411秒で, ヘパリン5000単位を追加した. ガス交換能は正常であった. その後, 人工肺流入部の圧力が上昇し始め, さらにヘパリン5000単位を追加して血液ガス分析を行ったがやはり正常であった. 心内操作開始後, 流入部圧が500mmHgを越えて人工肺と回路の接続部から血液が漏れだし, 体外循環の維持が困難となった. 速やかに冷却して循環停止とし人工肺を交換した. 交換に要した循環停止時間は83秒であった. 【結果】使用した回路部品には肉眼的血栓は確認できなかった. 製造業者による人工肺分析の結果, 人工肺内部の多量の白色血栓が証明された. 【考察】本症例ではACTの低下やアルカローシスによる赤血球の変性はなかったにも関わらず, 人工肺に白色血栓が付着した. 原因として, 活動期の疣腫表面での組織因子発現と外因系凝固の亢進が生じていた可能性が考えられる. 今後同様の症例に対しては, ACTを通常以上に高める, 付加的な抗凝固手段を講じるなどの対策をとりたい. 危機管理対策として人工肺交換の練習も重要である. 当院では体外循環中の異常事態に備えて, 人工肺や回路の交換練習を行っていたため, 短時間で人工肺の交換を行うことができた. 2007年に厚生労働省から示された「人工心肺装置の標準的接続方法およびそれに応じた安全教育等に関するガイドライン」に準じて, 従来人工肺流出部側のみに取り付けていた送血回路圧モニタを人工肺流入部側にも追加した矢先であった. ガイドラインに準じていなければ今回の異常を発見するすべはなかった. 【結論】人工肺流入部圧のみの急激な上昇により体外循環中に人工肺の交換を余儀なくされた症例を経験した. 今後, 同様の症例を想定しての訓練や抗凝固の工夫, さらには危機管理マニュアルの整備が必要である. |
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ISSN: | 0912-2664 |