(14)人工心肺を使用した開心術における中枢動脈・末梢動脈圧の圧較差発生に関する検討
【目的】当院では開心術中, 大腿動脈圧と橈骨動脈圧を表示しているが, 多くの症例で体外循環中あるいは体外循環後から橈骨動脈圧の偽性低下が観察される. 偽性低下とは中枢・末梢間に圧較差が生じた状態のことであるが, 原因については多くの報告があり, 末梢血管の収縮・拡張, 循環血液量減少, 血管弾性率の変化など見解は異なる. 今回, これらの報告の再考を目的に, 体外循環前後の循環動態, 体外循環条件, 薬剤使用量などの検証を基に, 偽性低下(以下, 圧較差)の発生要因について検討した. 【対象】人工心肺を使用した成人開心術22例. 【方法】体外循環離脱後の大腿動脈圧が橈骨動脈圧に比べ5mmHg以...
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Format: | Tagungsbericht |
Sprache: | jpn |
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Zusammenfassung: | 【目的】当院では開心術中, 大腿動脈圧と橈骨動脈圧を表示しているが, 多くの症例で体外循環中あるいは体外循環後から橈骨動脈圧の偽性低下が観察される. 偽性低下とは中枢・末梢間に圧較差が生じた状態のことであるが, 原因については多くの報告があり, 末梢血管の収縮・拡張, 循環血液量減少, 血管弾性率の変化など見解は異なる. 今回, これらの報告の再考を目的に, 体外循環前後の循環動態, 体外循環条件, 薬剤使用量などの検証を基に, 偽性低下(以下, 圧較差)の発生要因について検討した. 【対象】人工心肺を使用した成人開心術22例. 【方法】体外循環離脱後の大腿動脈圧が橈骨動脈圧に比べ5mmHg以上高い場合を圧較差発生症例とし, 圧較差非発生症例をA群, 圧較差発生症例をB群とした. 両群の患者背景, 体外循環前後の循環動態, 体外循環条件, 薬剤使用量についてT検定, χ二乗検定を行った. 【結果】A群9, B群13症例となった. 有意差が生じた項目は, 末梢血管抵抗, 身長, 体重, BSA, BMI, 血管拡張剤使用量, 高血圧症の有無であった. 【考察】A群では, 末梢血管抵抗値が低いため圧較差が生じにくいと考えられた. 血管径が圧較差発生に関与することは, A群で身長, 体重, BSA, BMIの値が高いことからも推測される. しかし, A群で血管収縮剤, B群では血管拡張剤の使用量が多く, 末梢血管拡張が圧較差を低減させるという考えと矛盾が生じる. 金沢らは, 血管弾性率の低下が圧較差発生原因としている. これを示唆する結果として, 血管弾性率が高いと推測される高血圧症がA群で多いことが挙げられる. 血管弾性率低下が圧較差発生原因の一つであり, 拡張剤は弾性率低下, 昇圧剤は弾性率を上昇させるとすると, 血管弾性率を保つには, 両剤の使用量のバランスが重要であり, B群で圧較差が生じたのは, 血管弾性率低下の方向にバランスが傾いたためと考えられた. 【結論】圧較差の発生には, 末梢血管収縮と血管弾性率低下が関与すると考えられた. |
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ISSN: | 0912-2664 |