61. 開鼻声の聴覚判定における嗄声の影響
[目的] 開鼻声の聴覚判定における嗄声の影響を調べるため, これまでに数種類の合成方法を用いた実験で嗄声を伴う場合は伴わない場合に比べ開鼻声の程度が低下することを報告した(今富ほか, 1999:Imatomi et al. , 1999:Imatomi et al. , 2000:雑賀ほか, 2001)が, 本報告では複数の合成手法を用いて, 同一話者から段階的な開鼻声を合成し, 同様の傾向が観察されるかについて検討した. [方法] 刺激の作成:成人の健常音声, 粗造性嗄声の/a/, /i/の音声サンプルを, 改良ケプストラムに基づく逆フィルタによって音源信号とスペクトル包絡とに分離した. 鼻...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 聴能言語学研究 2002, Vol.19 (3), p.211-211 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | [目的] 開鼻声の聴覚判定における嗄声の影響を調べるため, これまでに数種類の合成方法を用いた実験で嗄声を伴う場合は伴わない場合に比べ開鼻声の程度が低下することを報告した(今富ほか, 1999:Imatomi et al. , 1999:Imatomi et al. , 2000:雑賀ほか, 2001)が, 本報告では複数の合成手法を用いて, 同一話者から段階的な開鼻声を合成し, 同様の傾向が観察されるかについて検討した. [方法] 刺激の作成:成人の健常音声, 粗造性嗄声の/a/, /i/の音声サンプルを, 改良ケプストラムに基づく逆フィルタによって音源信号とスペクトル包絡とに分離した. 鼻音のモデルに基づいて健常音声のスペクトルに極零対を追加し, フォルマント型合成手法も併用して, 段階的な開鼻声のスペクトル包絡を得た. 音源2種類(嗄声なし嗄声あり)とスペクトル包絡4種類(開鼻声なし軽度にありあり顕著にあり)を組み合わせて各母音8つの刺激を作成した. 聴取実験:上記の刺激を複数個, 複数の言語聴覚士に聴取させ, 5段階評価で開鼻声の程度を判定させた. [結果] 極零対の追加による軽度から中等度の開鼻声, フォルマント型合成手法による顕著な開鼻声のいずれにおいても, 嗄声がある音声は嗄声がない音声に比べて, 開鼻声の程度が低く判定される傾向が認められた. [考察] 嗄声が聴覚的鼻音性を変化させる要因を調べるために, 各音声サンプルのスペクトル包絡を求めたところ, 嗄声がない音声と嗄声がある音声で, スペクトル包絡に顕著な差は認められなかった. このことから嗄声が聴覚的鼻音性を変化させる要因は音響的変化ではなく, 鼻音性をマスキングするような聴覚心理学的要素の可能性が示唆された. 今後さらに検討を重ねる必要がある. [結論] 極零モデル, およびフォルマント型合成手法を用いて作成した同一話者による段階的な開鼻声においても, 嗄声があることによって開鼻声の程度が低く判定されることが明らかになった. |
---|---|
ISSN: | 0912-8204 |