58. 入院ALS患者へのパソコン導入:チームアプローチの実際とコミュニケーション支援

[はじめに] 入院ALS患者に対し, 言語聴覚士(ST)と作業療法士(OT)が協力してコミュニケーション支援のためにパソコンを導入した. この経験をもとに, パソコンを活用するための評価検討項目とSTOTの臨床領域を整理し, さらにパソコンがQOLにどのように寄与したかを考察したので報告する. [症例] 元会社員の男性であり, 1990年42歳時に両上肢挙上困難が出現, ALSと診断された. 1991年人工呼吸器装着, 以後, ときどき, 家庭外泊を行いながら入院加療を継続中である. 意志疎通には透明五十音ボードやコミュニケーションエイドを使用していたが, ご本人の希望で1998年にパソコンを...

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Veröffentlicht in:聴能言語学研究 2002, Vol.19 (3), p.209-209
Hauptverfasser: 土橋三枝子, 馬場千寿子, 作田浩行, 原啓子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:[はじめに] 入院ALS患者に対し, 言語聴覚士(ST)と作業療法士(OT)が協力してコミュニケーション支援のためにパソコンを導入した. この経験をもとに, パソコンを活用するための評価検討項目とSTOTの臨床領域を整理し, さらにパソコンがQOLにどのように寄与したかを考察したので報告する. [症例] 元会社員の男性であり, 1990年42歳時に両上肢挙上困難が出現, ALSと診断された. 1991年人工呼吸器装着, 以後, ときどき, 家庭外泊を行いながら入院加療を継続中である. 意志疎通には透明五十音ボードやコミュニケーションエイドを使用していたが, ご本人の希望で1998年にパソコンを導入した. この時点での随意運動は右下口唇挙上と眼球運動に限られていた. [評価検討項目と職務分担] 機器選定と活用のために, STとOTは次のような観点のもとに分担連携してアプローチを行った. (1)運動面(主にOT)…随意性, 持続性(耐久性), スイッチ選択, パソコンのセッティングとポジショニング等, (2)精神面(STとOT)…注意, 記憶, 反応抑制, 柔軟性, 心理状態等, (3)社会面(主にST)…コミュニケーション手段としての定着, コミュニケーション相手の開発, 自己表現, 情報の収集と発信等, (4)その他の側面…視覚聴覚, サポート体制, 助成金情報等. [本症例のパソコン活用] エッセイ執筆のほか, 日常的には通信機能を最も多く用いている. 電子メールやインターネットを通して「自分の命が社会とつながっていることを実感できる」と感想を述べている. [まとめ] ALS患者にパソコン導入を図るには運動面のみならず精神面や社会面についても評価検討することが必要である. その際, STとOTがおのおのの専門性を生かしてチームアプローチをすることが望ましい. 本症例の取り組みから障害が進行したALS患者にとってパソコンの通信機能はコミュニケーション範囲の拡大と社会参加を促進するものであることが確認された.
ISSN:0912-8204