B-4群:摂食・嚥下障害

演題41(朴)は, 1998年に重症心身障害者入所施設へと移行した所属施設において, 病棟職員を対象に調査を行った. そのうち, 摂食嚥下姿勢機能での問題点を有すると判明したケースのうち, 成人で, 長年, 仰臥位での摂取, 介助が行われ, 併せて側弯を有する, 重度な3事例について, 援助した経過を報告した. 演者は, 各ケースの主要な問題点を摂食姿勢に求め, うち2例は仰臥位から腹臥位へ, もう1例は車椅子座位で, 頭部頸部の安定性を得られるポジショニングを試み, 摂食嚥下機能の改善とともに, 呼吸や緊張にも良い結果をもたらした. 座長は, このような摂食姿勢や介助方法の変化を実際に食事を...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:聴能言語学研究 2001, Vol.18 (3), p.235-236
1. Verfasser: 寺田美智子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:演題41(朴)は, 1998年に重症心身障害者入所施設へと移行した所属施設において, 病棟職員を対象に調査を行った. そのうち, 摂食嚥下姿勢機能での問題点を有すると判明したケースのうち, 成人で, 長年, 仰臥位での摂取, 介助が行われ, 併せて側弯を有する, 重度な3事例について, 援助した経過を報告した. 演者は, 各ケースの主要な問題点を摂食姿勢に求め, うち2例は仰臥位から腹臥位へ, もう1例は車椅子座位で, 頭部頸部の安定性を得られるポジショニングを試み, 摂食嚥下機能の改善とともに, 呼吸や緊張にも良い結果をもたらした. 座長は, このような摂食姿勢や介助方法の変化を実際に食事を介助している職員が, どのように受け入れてくれるようになったのかと質問した. 施設の職員に理想的な介助方法を伝えても, 時間の制約や長年の習慣を急に改めることは困難であると日々感じているからである. 症例1が腹部膨満を防ぐには, 腹臥位が適当であるとわかり, 食事中も同様にしたいとの申し出があり, スムーズに受け入れられた. 現場の側から出た明確な要求に応じ, 改善を示せたことが, 第2, 第3の試みを評価してもらえたゆえんであろう. 今後の活躍を期待したい. 演題42(北川ら)は, 重度脳障害をもつ2事例の報告であった. 症例1は6歳までは健常に発育し, 水痘肺炎から低酸素脳症となり, 痙性四肢麻痺となった9歳の児である. 覚醒も低く, スプーンが口に触れても開口しない. サイレントな誤嚥もある. 以前と同様に食べてもらいたいと思う母親の焦りや, 育児不安を受けとめながら, 誤嚥がおこりにくい体幹の角度調整, 飲み込みやすいゼリーから開始するなど, 母親と話し合いながら, 丁寧に取り組んでいる. 症例2は重症仮死で出生した, 3歳の児である. 口唇からの取り込みがうまくいかず, 抱っこで頭部を後屈させ, こぼさないように介助していた. これに伴い, スプーンの咬み込みや, むせが生じていた. 股関節を屈曲させ全身の緊張をとり, 取り込み時に頭部を前屈させること, 食形態をまとまりやすいものにすることなど, 姿勢や介助法, 食形態を調整していった. また, 抱っこのみでなく, 座位保持装置の作製に向けての検討もしている. 朴(青い鳥医療福祉センター)より, 座位保持装置の作製には, 他の職種が関わったのかとの質問があったが, PTを中心にSTも関わったとの応答であった. また, 座長からは, 抄録のまとめにある「担当ST自身の-略-スキルアップ」とは具体的には, との質問に対し, 食事に適切な姿勢をSTが実現して示すことなど, 姿勢やポジショニングについての実技, 理解の向上をさしているとの答えであった. 演題43(高瀬)は, これまでの長年の関わりから, 摂食機能の向上の取り組みの前提として子どもの全生活を視野に入れながら, 保護者のみならず, 周囲の関係者との連携の必要性を痛感している. 症例は, ヘルペス脳炎後遺症による, 痙直型四肢麻痺の5歳の児である. 公立保育園で3年間過ごし, その間PTOTSTの外来訓練を併用していたが, 4歳11ヵ月で同通園施設に入園した. 各スタッフより, 食事意欲に乏しく, 活動性も低いことが問題点として挙げられた. 取り組みを振りかえって, 体調や生活リズムを整え, 楽しい雰囲気で接することが食事援助への第一歩であり, その安定の上に遊びや, 食事などの活動があることを再確認している. 座長は, 当初, 食事への意欲が減退していると感じたのは具体的にどのようであったかと質問した. 体幹の低緊張もあり, テーブルにうつ伏せがちであり, 夜間の睡眠が十分でないため, 午前中からウトウトしている状況であった. このため, 食事中に無理やり体を起こされ食べさせられてしまうことで, 食事時間に不快な思いをしていたのではないかとの答えであった. 3演題ともに施設内でのPT, OTとの連携が行き届いており, STのみが食事の問題について奮闘するのではなく, 姿勢の準備や, 補助具の考案, 呼吸との関連など常に相談できる状況を保っていた. こうした職種間の情報交換や連携で, ST自身を磨くことも, ぜひ行いたいものである. そのためには, ケースを中心として多職種と議論し, 助け合う内部的な勉強会などの開催も有効である. フロアーからの質疑がほとんどなく残念であった. しかし重症な方々の食事についてトータルにきちんと対応するSTが増えていることを実感でき, 有意義なセッションとなった.
ISSN:0912-8204