M-1. 人工内耳装用児へのヴェルボトナル・メソッドの適用

【はじめに】人工内耳装用児でも先天性聴覚障害児同様, 言語発達や音声言語獲得が課題となっている. 人工内耳は単に手術を実施するだけでは不十分であり, その後の音声言語獲得訓練も重要であるといわれているにもかかわらず, 具体的な音声言語獲得訓練方法について議論がなされていないのが現状である. そこで, 生きた言語の獲得や発音矯正を目的としているヴェルボトナル・メソッド(以下VT法)を, 人工内耳装用児に適用した1事例について報告をする. 【経過】初診時, 4:6の女児. ろう学校幼稚部年中に在籍をしていたが, 補聴器装用効果が期待できず発声発語はろう児特有の鼻音化した[a][o][ou]で, コ...

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Veröffentlicht in:コミュニケーション障害学 2007, Vol.24 (3), p.228-228
Hauptverfasser: 吉川雅博, 井上ひとみ, 出口正裕
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:【はじめに】人工内耳装用児でも先天性聴覚障害児同様, 言語発達や音声言語獲得が課題となっている. 人工内耳は単に手術を実施するだけでは不十分であり, その後の音声言語獲得訓練も重要であるといわれているにもかかわらず, 具体的な音声言語獲得訓練方法について議論がなされていないのが現状である. そこで, 生きた言語の獲得や発音矯正を目的としているヴェルボトナル・メソッド(以下VT法)を, 人工内耳装用児に適用した1事例について報告をする. 【経過】初診時, 4:6の女児. ろう学校幼稚部年中に在籍をしていたが, 補聴器装用効果が期待できず発声発語はろう児特有の鼻音化した[a][o][ou]で, コミュニケーションは生活に必要な数種の身振りのみであった. 手術(4:11)直後より, 身体リズム運動によるリズム・イントネーションを重視した聞き取り訓練を開始した. 訓練開始後, 3カ月頃より超文節的な要素を含む声質の変化がみられるようになり, リズムのある繰り返し2~4音節単語の聞き取りが可能になってきた. 6カ月頃より身振りなどのサインが消失し, 音声が中心の生活へと変化した. 9カ月頃よりわらべうたリズムのテキストを使用した訓練を開始し, 音読を中心に生きた言語の獲得や発音の矯正を行った. 手術2年後には, 自発語が活発に出始めた. 手術3年後には会話の訓練を中心に行った. 手術5年後には自然な会話が成立するようになった. 【考察】人工内耳手術年齢が高いと, 装用後の療育効果は得にくいといわれている. しかし, 本症例はVT法による指導を導入することで, より効果的に聞き取りの強化・構音の改善に効果がみられた. 人工内耳装用児の日常生活を考えた場合, 言語発達面だけでなく音声言語面(聞き取り・発音の明瞭さ)の重要さも強く認識し療育(言語訓練)を行うべきであると考える.
ISSN:1347-8451