ガ類性フェロモンの進化—ガの系統からフェロモン化合物の変遷を辿る
子供の頃にファーブルの『昆虫記』を読んだことがある人は, オオクジャクヤママユ(Saturnia pyri)の雌が遙か遠くから多数の雄を呼び寄せる描写を覚えているだろう. ファーブルは様々な実験を通じて, 雌が何らかの匂いを出して雄を呼んでいることを確信するに至ったが, その匂いの正体が明らかになるのは, 当分先のことであった. 「匂い」の正体は, 1959年にドイツのブテナントらによって突き止められた. カイコガの雌が分泌する「匂い」の実体として, (10E,12Z)-10,12-hexadecadien-1-ol (ボンビコール)が同定され, これら同種他個体の行動を制御する物質に「フェロ...
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Veröffentlicht in: | 日本農薬学会誌 2020/02/20, Vol.45(1), pp.13-14 |
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Hauptverfasser: | , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 子供の頃にファーブルの『昆虫記』を読んだことがある人は, オオクジャクヤママユ(Saturnia pyri)の雌が遙か遠くから多数の雄を呼び寄せる描写を覚えているだろう. ファーブルは様々な実験を通じて, 雌が何らかの匂いを出して雄を呼んでいることを確信するに至ったが, その匂いの正体が明らかになるのは, 当分先のことであった. 「匂い」の正体は, 1959年にドイツのブテナントらによって突き止められた. カイコガの雌が分泌する「匂い」の実体として, (10E,12Z)-10,12-hexadecadien-1-ol (ボンビコール)が同定され, これら同種他個体の行動を制御する物質に「フェロモン」という語が提唱された. ブテナントらの発見の後, 農業害虫を多く含むガ類を中心に性フェロモン(交尾に使われるフェロモン)の研究が進み, 現在は700種近いガの性フェロモン成分が同定されている. 広範な分類群のガについて性フェロモン物質の知見が蓄積するにつれ, その化学構造にある法則性が見いだされるようになった. |
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ISSN: | 2187-0365 2187-8692 |
DOI: | 10.1584/jpestics.W20-15 |