植物の全身獲得抵抗性誘導剤の作用機構に関する研究

「はじめに」植物は, 常に虫や病原菌などの外敵から攻撃を受けており, これらに対して独自の自己防御機構を発達させてきた. 全身獲得抵抗性(systemic acquired resistance, SAR)は, 非親和性病原体の感染による壊死病斑の形成からサリチル酸(SA)の蓄積を介してシグナルが伝えられて, 全身に誘導される病害抵抗性である, SARが誘導された植物では引き金になった病原体だけではなく感染経路の異なる幅広い病原体(ウイルス, カビ, バクテリア)の感染・増殖も抑制され, その効果は数週間持続する. 現在までにさまざまな植物においてSARの存在が確認され, モデル実験植物である...

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Veröffentlicht in:Journal of Pesticide Science 2007/08/20, Vol.32(3), pp.291-296
1. Verfasser: 安田, 美智子
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:「はじめに」植物は, 常に虫や病原菌などの外敵から攻撃を受けており, これらに対して独自の自己防御機構を発達させてきた. 全身獲得抵抗性(systemic acquired resistance, SAR)は, 非親和性病原体の感染による壊死病斑の形成からサリチル酸(SA)の蓄積を介してシグナルが伝えられて, 全身に誘導される病害抵抗性である, SARが誘導された植物では引き金になった病原体だけではなく感染経路の異なる幅広い病原体(ウイルス, カビ, バクテリア)の感染・増殖も抑制され, その効果は数週間持続する. 現在までにさまざまな植物においてSARの存在が確認され, モデル実験植物であるシロイヌナズナを中心に, 誘導にかかわるタンパク質の同定など, SAR誘導機構の解明研究が盛んに行われている. これまでに, SA合成に機能しているICS11)やEDS52), SAの下流に機能する転写調節因子NPR13), NPR1と結合する転写因子TGA4)などが見いだされている. 研究を開始した2000年当初には, SARを誘導する化合物plant activatorが4種見いだされており, それらの化合物の作用点が解析されていた. 明治製菓が開発したイネいもち病防除剤オリゼメートの有効成分であるprobenazole(PBZ;3-allyloxy-1,2-benzisothiazole-1, 1-dioxide)5-7)とその活性代謝産物である1,2-benzisothiazol-3(2H)-one-1, 1-dioxide(BIT)はSAの生合成を介してSARを誘導し8,9), Ciba-Geigy(現Syngenta)が開発した2,6-dichloroisonicotinic acid(INA)10)およびコムギうどんこ病防除剤バイオンの有効成分であるbenzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid S-methyl ester(BTH)11)がSAシグナルの下流を活性化する(Fig.1).
ISSN:1348-589X
1349-0923
DOI:10.1584/jpestics.32.291