3.JAグループにおける安全な農産物作りの取組み

安全な農産物とは何かと問われると, 「農産物の安全性」≒「残留農薬の有無」ととられていることが多い. しかも, 農薬の安全性や毒性の強弱については語られず, 残留の無い農産物が安全ととらえられている. しかし, 出荷前に全ての作物を残留分析することは, 物理的にもコスト的にも絶対不可能なことであり, 安全を証明するために残留分析以外の手段が必要となってくる. 3. 1. 使用基準の遵守と農産物の安全性 農薬登録制度における農薬使用基準(収穫前使用日数や使用回数など)は, 厳密な作物残留試験データを基にして, 収穫物に基準値を越えて農薬が残留することがないよう慎重に決定されている. 登録認可され...

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Veröffentlicht in:Journal of Pesticide Science 2004, Vol.29 (4), p.396-397
1. Verfasser: 宗和弘
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:安全な農産物とは何かと問われると, 「農産物の安全性」≒「残留農薬の有無」ととられていることが多い. しかも, 農薬の安全性や毒性の強弱については語られず, 残留の無い農産物が安全ととらえられている. しかし, 出荷前に全ての作物を残留分析することは, 物理的にもコスト的にも絶対不可能なことであり, 安全を証明するために残留分析以外の手段が必要となってくる. 3. 1. 使用基準の遵守と農産物の安全性 農薬登録制度における農薬使用基準(収穫前使用日数や使用回数など)は, 厳密な作物残留試験データを基にして, 収穫物に基準値を越えて農薬が残留することがないよう慎重に決定されている. 登録認可された農薬をその使用基準を守って使用すれば, 作物中の農薬残留量が定められた農薬残留基準値を超えることはなく, 安全な農産物を生産できる. 農薬を使用して生産された農産物の安全性は, 使用基準を遵守することにより本来は保証されている. 基準を守って作った農作物の安全性の証明としては, JAとしては防除日誌記帳運動とパイロットJA運動に取り組んできた. 防除日誌記帳運動の歴史としては, 1971年(昭和46年):安令防除運動開始し, 「生産者, 農産物, 環境」の3つの安全を追求してきた. 1979年からは, 第二次安全防除運動, 1985年からは安全防除全農家実践運動で防除日誌記帳運動を農産物の安全性を消費者(あるいは生産者自身)に「目に見える安心」を伝えていくことを目指してきた. 1989年からは「防除日誌パイロットJA」が開始された, この運動は, 防除日誌のチェックと使用された農薬の残留分析を行うことで農産物の安全性を証明することを目指したものであった. 1998年までに延べ410JA, 23作物, 2470農家が参加し, 1998年からは, 「安全防除優良JA拡大運動」を展開している. 3. 2. 基準を守って作った農作物の安全性の証明 防除日誌パイロットJA(10年間)の成果は, 作物から残留農薬検出されず:約95%, 検出はしたものの基準値以下:約5%(2470農家, 18,480農薬分析の結果)の結果が得られ, 安全防除優良JA(3年間)でも, 検出せず:91%, 検出はしたものの基準値以下:9%と使用基準を守って農薬を使用した場合, 基準値を超えるものは無く, ほとんどが分解, 消失し収穫物には残留していないことが実証された. このように, 農薬を使用基準を遵守して使用すれば, 生産された農産物の安全性は保証されている. では, それをどうやって使用基準の遵守を証明するか. その答えはトレーサビリティ(traceability:追跡可能性)システムの活用である. 消費者は, 食品を「安全性」, 「おいしさ」, 「価格」で選んでおり, トレーサビリティシステムの導入は, 不祥事発覚以後著しく低下した食品の安全性への信頼を高め, このシステムが導入された食品であれば, 約6割が高くても買うとの調査報告もある. 農薬のトレーサビリティシステム構築とは, 生産物の製造から流通にいたる全履歴を遡及できることを指し, 現在行われている防除の記録を確実に残しその記録を遡及できるような仕組みになっていれば, システムとして立派に機能するのである. その実現には, 必ずしも高価なITシステムを必要とするわけではなく, それらは, 記録や, 解析, 公開を支援し, 実施しやすくするものに過ぎない. また, 農薬取締法上, 防除の記録は努力項目となっているが, 実質的には守らなければならない基準と同じつもりで扱うべきである. 罰則を科す基準は, 食用作物および飼料作物に農薬を使用しようとする場合, 農薬登録時に定めた基準(適用作物, 単位面積当たりの使用量の最高限度または希釈倍数の最低限度, 使用時期, 使用総回数)を遵守することを義務としている. 遵守の努力を要請する基準は, 農薬の使用者は, 使用した年月日, 使用した場所, 使用した農作物名, 使用した農薬の種類または名称, 使用した農薬の単位面積当たりの使用量か希釈倍数の事項を帳簿に記載することに努めるよう求められている. 記帳推進上の課題としては, 有効成分別使用回数, 遵守しやすい農薬登録の充実, マイナー作物への登録拡大, 果菜類の使用回数, 収穫前日使用=24時間, 日誌チェックのタイミングがあるが, 生産農家が遵守しやすい農薬登録の充実が重要である. このためにはマイナー作物への登録拡大措置の継続と登録システムの検討, 作期が長い果菜類の場合複数の薬剤による輪番使用, 作業手順による対応と根拠データの作成など使用基準などの合理的な見直しが必要である. 日誌チェックのポイントは, 巡回回数を増やし, 回数要注意の農薬の使用などに配慮し, 事前に農家の防除内容が分かれば効率的な巡回が可能などである. 今後の取り組みとして, 農産物の安全性を確保するため, 使用基準を遵守した適正な防除とそれを行ったことを証明する防除日誌の記帳, 閲覧の運動が農業現場の隅々まで行き渡るよう普及努力することである.
ISSN:1348-589X