医療的ケアのない児への社会的処方としての訪問看護の導入

〔論文要旨〕 医療的ケア児への訪問看護などの在宅医療の導入は必須といえる. 一方で, 医療的ケアは必要ではないが, 慢性疾患などで長期療養を要する児については, 在宅医療の導入は多くない. 今回, 医療的ケアはないものの, 訪問看護の導入が児とその家族にとって有益であったと考えられる一例を経験したため報告する. 研究対象者はガレン大静脈瘤とそれに伴う高心拍出性心不全を基礎にもつ4か月の男児である. ガレン大静脈瘤に対する塞栓術のための入院時検査で, 補体異常症が鑑別にあがるなど, 複雑な病態を呈した. 塞栓術後に月齢7か月で退院の方針となったが, 退院後の生活での医療的な不安が母の中で強くなっ...

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Veröffentlicht in:小児保健研究 2022-05, Vol.81 (3), p.311-314
Hauptverfasser: 杉浦由希子, 中尾寛, 田中雄一郎, 山口麻子, 石黒精, 窪田満
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:〔論文要旨〕 医療的ケア児への訪問看護などの在宅医療の導入は必須といえる. 一方で, 医療的ケアは必要ではないが, 慢性疾患などで長期療養を要する児については, 在宅医療の導入は多くない. 今回, 医療的ケアはないものの, 訪問看護の導入が児とその家族にとって有益であったと考えられる一例を経験したため報告する. 研究対象者はガレン大静脈瘤とそれに伴う高心拍出性心不全を基礎にもつ4か月の男児である. ガレン大静脈瘤に対する塞栓術のための入院時検査で, 補体異常症が鑑別にあがるなど, 複雑な病態を呈した. 塞栓術後に月齢7か月で退院の方針となったが, 退院後の生活での医療的な不安が母の中で強くなった上に, 家庭状況に問題があり, 母以外に養育者がおらず, 精神的なサポートもない状況であった. これらの社会的課題に対して, (1)医療的な不安の解消, (2)母の社会的・精神的孤立を防ぐ支援, (3)養育の手助け, の3つを目的として訪問看護を導入した. 退院5か月後に母にインタビューを行ったところ, 前述した目的についてそれぞれに有益な影響があったと確認できた. 今回, 訪問看護の導入が社会的課題の解決の一助となった. 在宅医療の役割は医療的ケアの支援だけでなく, 社会的支援もそのひとつである. 医療的ケア度が低い児においても, 社会的課題の多い症例においては, 在宅医療の導入が社会的処方として寄与しうると考えらえる.
ISSN:0037-4113