研究者への社会的要請と自由な発想

科学の歴史は新規的発見・発明の歴史であるが, その時々の社会的背景や要請が科学者の志向を強く規定する. 私たちは自己の「自由な発想」で日々の研究を進めている一方で, 「周囲の様子」を覗いながらプロジェクトを立案していることを自覚する. 「免疫学の始まり」19世紀まで人類の健康を脅かす問題は感染症であった. 1796年5月にエドワード・ジェンナーが天然痘ワクチンを開発したが, その切っ掛けは彼が医師として修行を受けていた時, 受診に訪れた搾乳婦の「私は以前牛痘に罹ったので, 天然痘に罹ることはありません」の一言であった. ジェンナーは開業医として仕事を始めた後に, その言葉を実験的に証明した....

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Veröffentlicht in:日本医科大学医学会雑誌 2021/04/27, Vol.17(2), pp.88-89
1. Verfasser: 森田, 林平
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:科学の歴史は新規的発見・発明の歴史であるが, その時々の社会的背景や要請が科学者の志向を強く規定する. 私たちは自己の「自由な発想」で日々の研究を進めている一方で, 「周囲の様子」を覗いながらプロジェクトを立案していることを自覚する. 「免疫学の始まり」19世紀まで人類の健康を脅かす問題は感染症であった. 1796年5月にエドワード・ジェンナーが天然痘ワクチンを開発したが, その切っ掛けは彼が医師として修行を受けていた時, 受診に訪れた搾乳婦の「私は以前牛痘に罹ったので, 天然痘に罹ることはありません」の一言であった. ジェンナーは開業医として仕事を始めた後に, その言葉を実験的に証明した. これが「免疫学」の始まりと言われている. その後1879年, ルイ・パスツールにより弱毒菌ワクチン法が開発された. 当時, 多数の養鶏を死に至らしめるニワトリコレラはフランス畜産業における喫緊の問題であり, 既に酵母によるワインの発酵を発見し名声を得ていたルイ・パスツールに問題解決の依頼が来た.
ISSN:1349-8975
1880-2877
DOI:10.1272/manms.17.88