Interleukin-6は解糖系酵素Hexokinase 2と6-Phosphofructo-2-kinase/Fructose-2,6-bisphosphatase-3の発現誘導を介して解糖系を亢進させる

「目的」: われわれは, 癌抑制因子p53の機能が欠損するとグルコース代謝を亢進し, そのことが癌化に重要であることを見出している. また, 多くの解析の結果から, 慢性的な炎症と発癌との関連性が指摘されており, 実際に炎症誘発腫瘍のモデル実験からもその関連性が証明されている. 本研究では, 癌化の分子機構を明らかにする目的で, 炎症とグルコース代謝の関係性について解析を行った. 「方法」: マウス胎児線維芽細胞(MEFs), ヒト肺線維芽細胞(TIG3)および肝臓癌細胞(HepG2)を様々な炎症制御因子で処理し, グルコース消費量の変化およびグルコーストランスポーター, 解糖系酵素の発現量の...

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Veröffentlicht in:日本医科大学医学会雑誌 2010, Vol.6 (2), p.91-91
Hauptverfasser: 安藤大, 上原郁野, 小暮佳代, 浅野由ミ, 中嶋亘, 阿部芳憲, 川内敬子, 田中信之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「目的」: われわれは, 癌抑制因子p53の機能が欠損するとグルコース代謝を亢進し, そのことが癌化に重要であることを見出している. また, 多くの解析の結果から, 慢性的な炎症と発癌との関連性が指摘されており, 実際に炎症誘発腫瘍のモデル実験からもその関連性が証明されている. 本研究では, 癌化の分子機構を明らかにする目的で, 炎症とグルコース代謝の関係性について解析を行った. 「方法」: マウス胎児線維芽細胞(MEFs), ヒト肺線維芽細胞(TIG3)および肝臓癌細胞(HepG2)を様々な炎症制御因子で処理し, グルコース消費量の変化およびグルコーストランスポーター, 解糖系酵素の発現量の変化を解析した. 「結果」:本研究で用いたほかの炎症制御因子と比べて, 炎症性サイトカインInterleukin-6(IL-6)処理により顕著にグルコース消費が亢進した. また, 遺伝子欠損細胞の解析からIL-6処理によるグルコース消費の亢進には癌抑制遺伝子p53および転写因子NFκBの関与は認められなかった. 更に, IL-6処理により転写因子STAT3を介して解糖系酵素Hexokinase2(HK2)および6-phosphofructo-2 kinase/fructose-2, 6 bisphosphatase-3(PFKFB3)の発現が誘導すること, PFKFB3およびHK2を一過性に細胞に発現させるとグルコース代謝が亢進することを見出した. 「考察」: 本研究から, IL6-STAT3経路がグルコース代謝を亢進することが示された. この結果から, 慢性的な炎症反応はIL-6-STAT3経路などを介してグルコース代謝を亢進することにより, 細胞の癌化に寄与しているのではないかと考えられた.
ISSN:1349-8975