Electrocardiography Screening for Cardiotoxicity after Modified Vaccinia Ankara Vaccination

2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降, 世界中でテロが問題とされる中, 天然痘がバイオテロに使用される可能性が示唆されている. アメリカでは2002年より軍隊に, 2003年より軍関連の医療関係者に大規模な天然痘ワクチン接種を行っているが, その副作用に心筋心外膜炎の発症が報告された. これをうけ, より副作用の少ないワクチンの開発が現在アメリカのみならず各国で行われている. ワクチン治験にあたり, 心筋心外膜炎の副作用を検査する手段のひとつとして, 心電図が行われている. 心筋心外膜炎に特徴的な心電図としては, ST上昇があるが, これと似た波形で正常人に認められるものとして, 早期再分...

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Veröffentlicht in:日本医科大学医学会雑誌 2008, Vol.4 (4), p.236-236
Hauptverfasser: 佐野純子, Bernard R.Chaitman
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降, 世界中でテロが問題とされる中, 天然痘がバイオテロに使用される可能性が示唆されている. アメリカでは2002年より軍隊に, 2003年より軍関連の医療関係者に大規模な天然痘ワクチン接種を行っているが, その副作用に心筋心外膜炎の発症が報告された. これをうけ, より副作用の少ないワクチンの開発が現在アメリカのみならず各国で行われている. ワクチン治験にあたり, 心筋心外膜炎の副作用を検査する手段のひとつとして, 心電図が行われている. 心筋心外膜炎に特徴的な心電図としては, ST上昇があるが, これと似た波形で正常人に認められるものとして, 早期再分極型ST上昇がある. ワクチンの治験対象者となる若年者では, 正常でも胸部誘導のSTは基線より上昇しており, また, 早期再分極型ST上昇も多い. 加えて, これらのST上昇は正常でも日時により変動することが報告されており, さらに心筋心外膜炎の心電図判定を難しくしている. 私の留学していたセントルイスECG Core labは, 大規模臨床研究ならびに治験のうちの心電図解析を行う解析センターである. 私の指導医でありECG Core labならびにCardiovascular Research部門のDirectorでもあるChaitman先生は, 数々の循環器ガイドラインの作成メンバーの1人でもあり, その関係もありラボではNIH関係の解析を多く扱っている. 新しい天然痘ワクチン(IMVAMUNE)の治験はNIHのSponsorのもと, 同大学の感染症科を中心に行われた. その治験の経過において, ワクチン治験における心副作用を検討するとともに, 治験対象群における心電図診断につき心電図自動診断も含め検討した. 対象は, 天然痘ワクチン接種の既往のない健常成人90名, 年齢18~32歳. 不整脈, 心室内伝導障害, T波異常などのあるものは除外した. IMVAMUNEまたはプラセボを0週, 4週目に接種し, 16週目に現行のワクチン(Dryvax)またはプラセボを投与した. 26週の経過を通じて, 9回の心電図が施行され, 自覚症状が確認され, 循環器医が必要と診断されれば, 適宜検査が追加された. Troponin Iの測定が前, 2週, 6週, 18週で行われた. 早期再分極型ST上昇は, 基線からのJ点とST部分の上昇が, 連続2心拍以上, 2誘導にわたり, V1またはV3では0.2mV以上, V2では0.3mV以上, その他の誘導では0.1mV以上上昇し, かつ, V1からV3ではQRSにひきつづくノッチまたはスラーのあるものとした. 結果:89名(男57名, 女32名)が治験に参加, 合計803枚の心電図が施行された. 経過中2名(2.2%)でST異常が出現し, 14名(15.7%)でT波異常の出現を認めたが治験終了時にはその71.4%で正常化していた. 投薬前より不完全右脚ブロックと診断されていた1例で, 経過中一過性にブロックが消失した. 新規の早期再分極型ST上昇が, 7名(8.2%)に出現した. 心電図自動診断で, 2例がST異常と診断されたが医師診断ではT波変化のみ, 21例で不整脈と診断されたが, そのすべてにおいて, 不整脈は認められなかった. 経過中17名が非特異的な胸部症状または心電図変化のため循環器医師受診を要した. そのうち, 12名が心エコーを施行され, うち1名でDryvax後の心筋心膜炎の可能性が考えられた. 結論:若年者を対象としたワクチン治験において, 心電図の変動は一般的に認められ, それのみでの判定は困難と考えられ, 頻回の心電図施行はむしろ不要と考えられた. また, 心電図自動解析診断は必ずしも循環器医の診断とは一致せず, 循環器以外の医師が施行する治験においても, 不要な検査を防ぐためにも, 心電図の循環器医による診断が必要と考えられた.
ISSN:1349-8975