11)コンソリデーション肺における呼吸音の音響学的解析

呼吸音の聴診は非侵襲的であり, 呼吸器疾患診断の上で必要不可欠なものではあるが, その表現や得られる情報が主観的であるという欠点もある. 近年, コンピューター機器の発達により, 様々な音響学的解析がなされるようになり, その客観的評価を試みる研究も行われている. 今回我々は, 胸部単純レントゲン所見のいわゆる"コンソリデーション"上で聴取される呼吸音を音響学的に解析し, その左右差およびレントゲン所見の改善前後での変化を評価した. 目的:コンソリデーション上の胸壁で収録した呼吸音を, コンピューターを用い音響学的に評価, 検討した. 対象:小児呼吸器科医に診断され, 胸部...

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Veröffentlicht in:Journal of Nippon Medical School 2000, Vol.67 (6), p.502-503
1. Verfasser: 城田和彦
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:呼吸音の聴診は非侵襲的であり, 呼吸器疾患診断の上で必要不可欠なものではあるが, その表現や得られる情報が主観的であるという欠点もある. 近年, コンピューター機器の発達により, 様々な音響学的解析がなされるようになり, その客観的評価を試みる研究も行われている. 今回我々は, 胸部単純レントゲン所見のいわゆる"コンソリデーション"上で聴取される呼吸音を音響学的に解析し, その左右差およびレントゲン所見の改善前後での変化を評価した. 目的:コンソリデーション上の胸壁で収録した呼吸音を, コンピューターを用い音響学的に評価, 検討した. 対象:小児呼吸器科医に診断され, 胸部レントゲン上おもに一側にコンソリデーションを認める肺炎患児5例(男児4例, 女児1例)である. 方法:コンソリデーション上胸壁(CSL)およびその反対側(CON), 気管上(TRA)の3カ所で呼吸音を収録した. 収録した呼吸音を高速フーリエ変換により周波数分析し, 得られたパワースペクトルより以下のパラメーターを算出し検討した. 気管音の共鳴周波数における, CSLおよびCON上のシグナル/ノイズ比を算出. さらに吸気, 呼気のそれぞれの平均パワースペクトルから呼吸停止時の平均パワースペクトルを差し引いて得られたスペクトルについて, 150~300Hz, 600~1200Hzの各周波数帯の平均パワーで評価した. 5例中4例で, 臨床症状あるいは胸部レントゲン所見の改善後に再度呼吸音の収録を行った(フォローアップ). 結果:CSL上ではCON上に比べ, 150~300Hzの低周波数帯において吸気呼気とも呼吸音のパワーの減弱が, 600~1200Hzの高周波数帯では呼気音のパワーの増強が認められた. フォローアップ時には, これらの所見は軽減する傾向を認めた. 考察:一般に成人では, 呼気音は主に中枢気道, 吸気音は主に末梢気道で生じると考えられている. 中枢気道で発生した呼吸音が胸壁へ伝搬する際には, 肺実質はローパスフィルターとして働くが, いわゆる"コンソリデーション"が存在すると肺の含気が低下しローパスフィルターとしての働きが減弱するため, コンソリデーション肺上で呼気呼吸音の高周波数域が増強するものと思われる. 一方, コンソリデーション肺上で低周波数域の呼吸音が減弱するのは, 肺容量の減少に伴う胸郭の共鳴周波数の上昇によって説明可能と思われた. 以上の所見は, 我々が日常診療の場で聴取している, いわゆる"気管支呼吸音"を客観的に裏付けるものである. 結語:コンピューターを用いた呼吸音解析は客観的かつ非侵襲的であり, 肺炎などコンソリデーション肺の治療効果の評価, フォローアップの指標として用いうる可能性が示唆された. 研究施設:Department of Pediatrics, University of Manitoba, Canada 指導者:Hans Pasterkamp
ISSN:1345-4676