5.虚血耐性現象の脳保護メカニズムの解明:Protein KinaseC,Ca2+/calmodulin-dependent protein kinaseIIへの影響

目的:短時間脳虚血後しばらくすると虚血耐性が生じることは広く認められているが, その機序に関しては未だ不明の点が多い. 今回, 虚血耐性現象のProtein Kinase Cγ(PKCγ)およびCa2+/calmodulin-dependent protein kinase II(CaMK II)におよぼす影響を中心に虚血耐性の脳保護メカニズムの検討を行った. 方法:砂ネズミの前脳虚血モデルを用い, 5分間両側総頸動脈をクリップにより閉塞し海馬CA1錐体細胞に致死的な虚血を作成した. この5分間虚血の24時間前に2分間の短時間虚血を与えた群(precondition群)およびsham oper...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:Journal of Nippon Medical School 2000, Vol.67 (1), p.44-44
Hauptverfasser: 桂研一郎, 赫彰郎, 片山泰朗, 栗原順一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:目的:短時間脳虚血後しばらくすると虚血耐性が生じることは広く認められているが, その機序に関しては未だ不明の点が多い. 今回, 虚血耐性現象のProtein Kinase Cγ(PKCγ)およびCa2+/calmodulin-dependent protein kinase II(CaMK II)におよぼす影響を中心に虚血耐性の脳保護メカニズムの検討を行った. 方法:砂ネズミの前脳虚血モデルを用い, 5分間両側総頸動脈をクリップにより閉塞し海馬CA1錐体細胞に致死的な虚血を作成した. この5分間虚血の24時間前に2分間の短時間虚血を与えた群(precondition群)およびsham operated群とを作成した. 致死的な5分虚血の開始前, 虚血終了時, 1時間再開通時, 24時間再開通時に脳を液体窒素にて固定し, -20度にて海馬CA1エリアを切り出した. 3mg前後の組織をhomogenizeし, 分画した後PKCγおよびCamKIIをWestern blot法にて測定した. 結果:虚血耐性獲得群では細胞質のPKCγは5分虚血開始時点ですでに有意に低値を示した. また, PKCγの虚血中および再灌流時の動きは耐性獲得群において有意に抑制されていた. また, 耐性獲得群ではCaMKIIのsynaptosomal fractionへのtranslocationが24時間再灌流時に有意に低値を示した. 考察:5分虚血後死んでいくCA1ではCaMKIIのtranslocationは24時間でも持続的に高値を示し, 生存するCA3では24時間で前値へもどる結果が報告されており, 今回precondition群にみられたCaMKIIの24時間での有意の低下も, 細胞の生存と密接な関係があると推察される. PKCγのtranslocationがpreconditionにより全体に抑制されたことも併せて考えると, 虚血耐性現象が細胞内カルシウムイオンのホメオスタシスの回復を促進した可能性が考えられる.
ISSN:1345-4676