P-73)胃潰瘍の除菌療法により異時性に十二指腸潰瘍,食道炎を発症した1例

症例は約16年前, 心窩部痛を主訴に当科を受診した56歳の男性. 既往歴はなく, 来院時の血液一般検査所見などにも異常所見はなかった. 喫煙, 飲酒歴もなく, 香辛料などの嗜好や食生活にも片寄りはみられなかった. 当時の内視鏡検査にて胃角部小彎側に小豆大, 治癒過程期の潰瘍を認め, 制酸剤, 防御因子増強剤にて治療を継続していた. 平成6年11月, 経過観察時の胃生検組織の鏡検(ギムザ染色)にてHelicobacter pylori(H. pylori)感染が確認された. このため, プロトンポンプ, インヒビター(PPI)(倍量), アモキシシリン(1,500mg)による2週間除菌療法後,...

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Veröffentlicht in:Journal of Nippon Medical School 1998, Vol.65 (6), p.551-551
Hauptverfasser: 日下部史郎, 松久威史
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:症例は約16年前, 心窩部痛を主訴に当科を受診した56歳の男性. 既往歴はなく, 来院時の血液一般検査所見などにも異常所見はなかった. 喫煙, 飲酒歴もなく, 香辛料などの嗜好や食生活にも片寄りはみられなかった. 当時の内視鏡検査にて胃角部小彎側に小豆大, 治癒過程期の潰瘍を認め, 制酸剤, 防御因子増強剤にて治療を継続していた. 平成6年11月, 経過観察時の胃生検組織の鏡検(ギムザ染色)にてHelicobacter pylori(H. pylori)感染が確認された. このため, プロトンポンプ, インヒビター(PPI)(倍量), アモキシシリン(1,500mg)による2週間除菌療法後, 常用量のPPIを4週間投与した. 除菌開始より6週間後の胃生検標本(改良型トルイジンブルー染色)の鏡検, 13C尿素呼気試験によりH. pyloriが陰性化した. その際, 新たに十二指腸潰瘍(治癒過程期)が発生していた. その6ヵ月後に胸やけが出現し, 十二指腸潰瘍は癩痕化していたが食道炎がみられた. 除菌判定時と同様の検査により, H. pyloriの再陽性化は認められなかった. PPIあるいはシメチジンと防御因子増強剤により食道炎は軽快したが, 再燃を繰り返している. 除菌療法後に食道炎, 胃, 十二指腸病変を発症する症例のあることが知られている. 諸家の報告によると, 食道炎は4.2~12.9%, 胃病変は1.9~38.3%, 十二指腸病変は2.5~13.0%にみられる. H. pyloriの除菌治療後に十二指腸潰瘍, 食道炎が同じ症例に発症した報告はまれと思われる.
ISSN:1345-4676