腸管ガスに関連する症状を主訴とする患者への認知行動療法の無効例から考える今後の研究の方向性
目的 : 過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) と自己診断して受療する患者の中には, 腸管ガスに困難感をもつ一群 (いわゆる, IBSの 「ガス型」 ) が存在する. われわれはIBS患者を対象に, 内部感覚曝露を用いた認知行動療法 (cognitive behavioral therapy with interoceptive exposure : CBT-IE) の日本語版を作成し, 臨床介入研究でIBSの重症度 (IBSSI-J) やQOLが7割以上の患者で改善されることを報告してきた. そこで, IBSの診断基準を満たすものの, 腸管ガスの訴...
Gespeichert in:
Veröffentlicht in: | 心身医学 2020, Vol.60(1), pp.50-57 |
---|---|
Hauptverfasser: | , , , , , , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
Tags: |
Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
|
Zusammenfassung: | 目的 : 過敏性腸症候群 (irritable bowel syndrome : IBS) と自己診断して受療する患者の中には, 腸管ガスに困難感をもつ一群 (いわゆる, IBSの 「ガス型」 ) が存在する. われわれはIBS患者を対象に, 内部感覚曝露を用いた認知行動療法 (cognitive behavioral therapy with interoceptive exposure : CBT-IE) の日本語版を作成し, 臨床介入研究でIBSの重症度 (IBSSI-J) やQOLが7割以上の患者で改善されることを報告してきた. そこで, IBSの診断基準を満たすものの, 腸管ガスの訴えが優勢な患者にIBS症状の改善を目的にCBT-IEを適用した症例を経験したので報告する. 症例 : 症例は20代女性, IBS混合型. 主訴は 「排便が頻回にある」 「多量の腸管ガスの貯留と排ガス」 . 数年前から複数の他院に通院し薬物療法を受けたが改善せず, X病院に紹介され受診した. 経過 : CBT-IEは全10回のセッションからなり, 心理教育, 認知再構成, 内部感覚曝露, 現実曝露などから構成されている. 介入前のIBSSI-Jの得点は, 325 (重症) であり, 介入終了時には355 (重症) であった. IBS症状は改善せず, 腸管ガスに関する訴えも残った. 考察 : 面接全体を通して腸管ガスの臭いに関連した訴えが続いた. 患者は認知再構成に拒否感を示し, 面接はCBT-IEの内容から逸れてしまった. 腸管ガス症状に自己臭恐怖が併存する患者は認知の変容が困難であることがしばしば経験される. 自己臭恐怖には森田療法が有効という症例報告があり, このような病態には, ①認知の内容を直接変容させない森田療法的技法と, ②腹部膨満への有効性が示されている瞑想の両方が含まれる第3世代のCBTのAcceptance and Commitment Therapyの適用も考えられ, 検証の余地がある. |
---|---|
ISSN: | 0385-0307 2189-5996 |
DOI: | 10.15064/jjpm.60.1_50 |