心身医療の伝承―若手治療者へのメッセージ
「心身医療を志した理由」 私たちの頃は, 医学部卒業後, 1年間, 一定の病院で各臨床科をくまなく研修するインターン(実地修練)を経て, それから医師国家試験を受けるという制度であった. 私は新潟大学医学部を出て, 県立がんセンター新潟病院でインターンを行ったのだが, そこの耳鼻咽喉科で, 喉の違和感や声のかすれなどの自覚症状から喉頭がんを自ら疑って受診する人が結構いて, 異常はないと言われても不安そうな顔のまま診察室を出て行く人もいた. 内科の回診では, 胃がんの新しい治療法を試みておられた指導医の, 触診で腫瘍の大きさの変化を調べているその横顔を, 不安そうに見ている30代後半の女性の表情...
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Veröffentlicht in: | 心身医学 2018, Vol.58(5), pp.440-444 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
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Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「心身医療を志した理由」 私たちの頃は, 医学部卒業後, 1年間, 一定の病院で各臨床科をくまなく研修するインターン(実地修練)を経て, それから医師国家試験を受けるという制度であった. 私は新潟大学医学部を出て, 県立がんセンター新潟病院でインターンを行ったのだが, そこの耳鼻咽喉科で, 喉の違和感や声のかすれなどの自覚症状から喉頭がんを自ら疑って受診する人が結構いて, 異常はないと言われても不安そうな顔のまま診察室を出て行く人もいた. 内科の回診では, 胃がんの新しい治療法を試みておられた指導医の, 触診で腫瘍の大きさの変化を調べているその横顔を, 不安そうに見ている30代後半の女性の表情が目に焼きついた. さらにまた, 臨終を告げるのも研修のうちの一つだと, 死を看取る方法を先輩医に教わって出向いたが, 人の死を告げるという厳粛な役割を, 宗教家でもない医師としてどのような気持ちで向き合えばよいのかと, 家族の嘆く病室を後にしながら考えていた. |
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ISSN: | 0385-0307 2189-5996 |
DOI: | 10.15064/jjpm.58.5_440 |