13. 頻回の救急受診を繰り返していた機能性嘔吐/過敏性腸症候群の一例(一般演題,第48回日本心身医学会近畿地方会演題抄録)
「はじめに」:夜間救急外来に頻回の受診を繰り返す患者は, 身体症状のみならず心理社会的な不安を抱えている. 今回はそうした症例の中で受療行動の背景にある不安を軽減することにより, 救急受診をしなくなった機能性嘔吐/過敏性腸症候群の合併例を報告する. 「症例」:70代・男性. 「主訴」:腹痛・嘔気・嘔吐. 「経過」:X-40年, イレウスに対し手術施行. X-2年11月, 消化管間葉性腫瘍に対し胃全摘術を施行. X-1年11月頃より食事摂取時のつまり感と1日2~3回程度の下腹部痛が出現. 2回の入院精査を行うも器質的異常所見は認められず, 次第に食後嘔吐が出現. 症状の増悪に伴い, 夜間救急外来...
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Veröffentlicht in: | 心身医学 2012/04/01, Vol.52(4), pp.339 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「はじめに」:夜間救急外来に頻回の受診を繰り返す患者は, 身体症状のみならず心理社会的な不安を抱えている. 今回はそうした症例の中で受療行動の背景にある不安を軽減することにより, 救急受診をしなくなった機能性嘔吐/過敏性腸症候群の合併例を報告する. 「症例」:70代・男性. 「主訴」:腹痛・嘔気・嘔吐. 「経過」:X-40年, イレウスに対し手術施行. X-2年11月, 消化管間葉性腫瘍に対し胃全摘術を施行. X-1年11月頃より食事摂取時のつまり感と1日2~3回程度の下腹部痛が出現. 2回の入院精査を行うも器質的異常所見は認められず, 次第に食後嘔吐が出現. 症状の増悪に伴い, 夜間救急外来への受診がはじまり頻回となったため, X年8月, 家族の勧めで当科紹介受診, 精査加療目的にて入院となった. 入院時の問診より患者は嘔気と下腹部痛の症状から「またイレウスになるのでは」という不安を強くもち, 大腸刺激性下剤を多量に使用していたことがわかった. 診察上, 腸蠕動音の亢進を認め, 消化管輸送能検査でも下行結腸のspasmが認められた. そのため, この結果を下腹部痛の原因として患者にフィードバックし, 適切な病態モデルに基づいた下剤と腸管運動機能改善薬の調整を行った. また「家に一人でいるときに症状が強くなる」というエピソードより, 患者の抱える心理社会的不安に対して支持的心理療法を行い, 家族と不安を共有することでその軽減を図った. 以上の経過により退院後3カ月の時点で嘔吐や腹痛はあるものの救急受診はなくなり, 頓服にてコントロール可能となっている. 「考察」:本症例では症状増悪への不安に対し患者がとった対処行動が, さらなる症状増悪と不安の増大を招いた. さらに心理社会的不安が加わることで, 頻回の外来受診という悪循環を生んだ. そのため適切な病態理解を促し, 患者の不安の軽減を図ることで前述の悪循環を断ち, 患者のQOLの向上を目指すことが重要である. |
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ISSN: | 0385-0307 2189-5996 |
DOI: | 10.15064/jjpm.52.4_339_1 |