13.造血幹細胞移植患者への心理的介入(一般演題,第67回日本心身医学会東北地方会プログラム・抄録集)

「背景」 東北大学病院血液・免疫科では, 1989年から造血幹細胞移植が始まり, 2000年代からは, 年間20例実施されている. 医師12名, 看護師24名, 2007年6月から医療心理士が非常勤で配置された. 造血幹細胞移植の対象になる患者は, 病名告知が前提であり, 病状によっては治療を急ぐために緊急入院を余儀なくされる. また, 家族から離れての長い闘病生活になるケースも多い. さまざまな副作用を伴う治療, 隔離された無菌室での移植, 移植に伴うGraft-versus-host-disease(GVHD)や感染症への不安など多くのストレスに曝され日々を過ごすことになる. このような移...

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Veröffentlicht in:心身医学 2011/08/01, Vol.51(8), pp.758
Hauptverfasser: 長谷川, 涼子, 吉田, 和子, 山田, 実名美, 亀岡, 淳一, 張替, 秀郎, 金澤, 素, 福土, 審
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:「背景」 東北大学病院血液・免疫科では, 1989年から造血幹細胞移植が始まり, 2000年代からは, 年間20例実施されている. 医師12名, 看護師24名, 2007年6月から医療心理士が非常勤で配置された. 造血幹細胞移植の対象になる患者は, 病名告知が前提であり, 病状によっては治療を急ぐために緊急入院を余儀なくされる. また, 家族から離れての長い闘病生活になるケースも多い. さまざまな副作用を伴う治療, 隔離された無菌室での移植, 移植に伴うGraft-versus-host-disease(GVHD)や感染症への不安など多くのストレスに曝され日々を過ごすことになる. このような移植患者に心理的介入を試みた2例について有用性と意義を検討した. 「症例1」 50代男性. 骨髄異形成症候群(Myelodysplastic Syndrome:MDS)初発で緊急入院後, 化学療法, 移植前処置, 臍帯血移植を行った. 医師による病状および治療方針説明直後からかかわり, 入院期間中定期的に対話を継続した. 治療内容や危険性, 生存率の説明後は, 極度に抑うつ的になり怒りの表出もみられた. 患者本人のこれまでの人生を振り返り, 病気により辞めざるをえなかった事業への悔恨を述べ, 妻や子どもたちの将来の心配を述べた. 短期間に凝縮された対話が行われた. 移植は, 生着不全であったが, 寛解に近い状態で退院して, 自宅療養となった. 幹細胞は生着しなかったが, 現実を前向きに受け止めることができた症例であった. 「症例2」 20代女性. 急性リンパ性白血病(Acute Lymphocytic Leukemia:ALL)初発で前病院にて化学療法による地固めで寛解し, バンクドナーからの同種骨髄移植目的で本院へ転院した. 入院当初から緊張が強く, 家族が頻繁には来院できず不安を募らせていた. 病状および治療方針説明も本人が聞き, 両親に極力迷惑をかけない姿勢が強く, 無菌室では, 情動を抑制して過ごしていた. 約3週間後無菌室から開放された後, GVHDに悩まされ, 抑うつ的になり涕泣が増えた. 親に甘えることができなかったと話し, 母親に要求を伝えられた後は, 心理的に安定し, 疾病に対する現実的な対応に変化した. 「考察」 造血幹細胞移植の対象患者およびその家族が受ける心身のストレスは, 心理・社会的に大きい. 一方, 現在の医療環境では, 病棟の医療従事者がストレス緩和を図ることは, 現実的に困難である. このような領域における医療心理士の有用性は高いと思われる.
ISSN:0385-0307
2189-5996
DOI:10.15064/jjpm.51.8_758_1