摂食と睡眠・覚醒をつなぐ神経ペプチド:オレキシン(特別講演,第67回日本心身医学会東北地方会プログラム・抄録集)
オレキシンは摂食関連ペプチドであり, 当初から発見者の筑波大, 桜井らによって摂食障害の原因の1つである可能性が示唆されてきた(Sakurai, 2005). これまでの実験動物を用いた研究にて, 絶食をするとオレキシン神経系の活動は亢進して(視床下部m-RNAの発現も亢進), 睡眠は減少, 覚醒が増加し, 活動量も増加することが明らかになっている. 上記の表現型の変化は神経性食思不振症の患者の行動パターン(摂食量の減少, 睡眠の減少, 覚醒の亢進, 活動性の増加)と非常に類似している. オレキシンの脱落によって過眠症の代表的な疾患であるナルコレプシーが発症することが明らかになり, 脳脊髄液オ...
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Veröffentlicht in: | 心身医学 2011/08/01, Vol.51(8), pp.752 |
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Hauptverfasser: | , , |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | オレキシンは摂食関連ペプチドであり, 当初から発見者の筑波大, 桜井らによって摂食障害の原因の1つである可能性が示唆されてきた(Sakurai, 2005). これまでの実験動物を用いた研究にて, 絶食をするとオレキシン神経系の活動は亢進して(視床下部m-RNAの発現も亢進), 睡眠は減少, 覚醒が増加し, 活動量も増加することが明らかになっている. 上記の表現型の変化は神経性食思不振症の患者の行動パターン(摂食量の減少, 睡眠の減少, 覚醒の亢進, 活動性の増加)と非常に類似している. オレキシンの脱落によって過眠症の代表的な疾患であるナルコレプシーが発症することが明らかになり, 脳脊髄液オレキシンの測定によって診断確定も可能となっている. 一方ではこれまでにオレキシン値が増加する疾患は知られておらず, 神経性食思不振症の患者さんの脳脊髄液中のオレキシン値や摂食関連ペプチド(メラノコルチン系:αMSH, AGRP)を測定することは, それら疾患の病態生理を解明し, 治療の進歩に大きな成果が得られると考えている. 対象はDSM-IVにて神経性食思不振症(AN:制限型)と診断された2症例である. 文書による同意を得て, 3mlの髄液を採取した. オレキシンとメラノコルチン系のペプチドであるαMSHとAGRPを測定した. 対照群として, 8例の検体を同時に測定した. オレキシン, αMSHとAGRPはともにPhoenix社のRIA kitを用いて測定した. この研究は秋田大学の倫理審査委員会の審査を経た. AN群とcontrol群において脳脊髄液中のオレキシン値に差は認められなかった. AgRPはAN群で3~8倍に増加していた. αMSHは測定できなかった. これまでにANの血液中のAgRPが50%程度増加しているとの報告(Yoshiuchi, 2005)や, AgRPの遺伝子多形が報告されている(Vink, 2001). AgRPの増加はANの飢餓状態を反映し摂食促進系シグナルが活性化されたためと考えられる. この所見が1次的なものというよりは, 絶食による2次的な可能性が高いと考えているが, 絶食から急激に過食に至る過程などに関与している可能性を考えている. |
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ISSN: | 0385-0307 2189-5996 |
DOI: | 10.15064/jjpm.51.8_752_1 |