10.発症時に人工妊娠中絶を行ったが,3年後に出産に成功した不安障害の1例(一般演題,第64回日本心身医学会東北地方会演題抄録)

「はじめに」: 不安障害は, 妊娠適齢期の女性に発症することが多いため, 患者が妊娠を希望することをしばしば経験する. 出生率の低下が進み人口が減少しはじめた本邦において, 女性患者が妊娠を希望する場合には, 可能な限りその希望に添いたいと考えるが, 妊娠によって症状が悪化する可能性と, 薬剤をいかにするかという問題が横たわっている. 今回われわれは, 発症時に人工妊娠中絶を経験しながらも, 薬物療法を継続しながら3年後に出産することができた1例を報告した. 「症例」: 31歳, 女性. 婚約者と同棲中に妊娠したが, X-3年5月30日(妊娠10週)に足のしびれと痛みを訴えて当院急患室を受診し...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:心身医学 2010/11/01, Vol.50(11), pp.1097
Hauptverfasser: 岩橋, 成寿, 國井, 啓子, 安井, 友春, 矢野, 正浩
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:「はじめに」: 不安障害は, 妊娠適齢期の女性に発症することが多いため, 患者が妊娠を希望することをしばしば経験する. 出生率の低下が進み人口が減少しはじめた本邦において, 女性患者が妊娠を希望する場合には, 可能な限りその希望に添いたいと考えるが, 妊娠によって症状が悪化する可能性と, 薬剤をいかにするかという問題が横たわっている. 今回われわれは, 発症時に人工妊娠中絶を経験しながらも, 薬物療法を継続しながら3年後に出産することができた1例を報告した. 「症例」: 31歳, 女性. 婚約者と同棲中に妊娠したが, X-3年5月30日(妊娠10週)に足のしびれと痛みを訴えて当院急患室を受診し, 同日に産婦人科に入院した. 神経内科で神経疾患は否定され, 対症療法を施行されたが, 足のしびれ感, 落ち着かない感じ, 静座不能が続き, 6月12日(妊娠12週6日)に患者の希望により人工中絶が施行された. 中絶後も症状が持続したため, 6月16日に当科に紹介され, 特定不能の不安障害として薬物療法を開始した. 症状は軽減し, 6月28日に退院した. 同年11月に入籍し, 通院を続けていたが, X-1年11月に妊娠が判明した. アミトリプチリンとクロナゼパムを継続していたが, 妊娠36週目から不潔恐怖が生じ, 自宅以外のトイレを使用できなくなり, 毎日自宅のトイレ掃除を行うようになった. クロキサゾラムの併用とアミトリプチリンの増量によって対応し, X年7月10日(38週4日)に産婦人科に入院し, 翌5日に帝王切開で健康な男児(生下時体重3,158g)を分娩した. 退院後にパロキセチンを追加し, 不潔恐怖は軽快している. 「結語」: 本例は妊娠中に不安障害が発症して人工妊娠中絶を行ったが, 治療を続けながら出産を希望した. 妊娠後期に不潔恐怖が発現したが, 薬剤の増量により症状を管理することができた. 今後, 不安障害患者の周産期の治療について, 知見の集積が必要と思われる.
ISSN:0385-0307
2189-5996
DOI:10.15064/jjpm.50.11_1097_1