2.不登校と発達障害(シンポジウム「不登校に隠れた病理を探る」,第48回日本心身医学会九州地方会演題抄録(1))
不登校は, 欠席日数が年間30日以上の長期欠席で, 病気や経済的理由などに該当しない状態と文部科学省によって定義されている. しかし, 一般的には, 登校拒否や学校恐怖などと従来は呼称されていた神経症的メカニズムによる欠席状況を指す. 不登校は, 2002年から一度は減少に向かうものの, この2年間では再び増加傾向を示している. 2007度の不登校の中学生の割合は前年度比0.05ポイント増の2.91%で, 34人に1人が不登校, 小学生の割合は全体の0.34%(06年度比0.01ポイント増)で, 298人に1人が不登校となっている. 最近の不登校の追跡調査から, 不登校児の80%近くが成人期に...
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Veröffentlicht in: | 心身医学 2010/08/01, Vol.50(8), pp.771 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 不登校は, 欠席日数が年間30日以上の長期欠席で, 病気や経済的理由などに該当しない状態と文部科学省によって定義されている. しかし, 一般的には, 登校拒否や学校恐怖などと従来は呼称されていた神経症的メカニズムによる欠席状況を指す. 不登校は, 2002年から一度は減少に向かうものの, この2年間では再び増加傾向を示している. 2007度の不登校の中学生の割合は前年度比0.05ポイント増の2.91%で, 34人に1人が不登校, 小学生の割合は全体の0.34%(06年度比0.01ポイント増)で, 298人に1人が不登校となっている. 最近の不登校の追跡調査から, 不登校児の80%近くが成人期には良好な社会適応を示すことが推定されるが, 社会的引きこもりや精神疾患発症の危険性などを考慮すると, 不登校児に対する臨床的評価と包括的支援の充実は急務である. 精神医学において, 不登校は独立した疾患概念として扱われてきた経緯があるが, 最近では多様な要因の折り重なりによって発生するという見方が優勢になっている. すなわち, 不登校は疾患ではなく現象や状態として認識されるようになった. そして, 不登校を引き起こす要因のひとつとして, 発達障害が注目されるようになった. 特に, 知的障害を伴わない自閉症スペクトラム, 注意欠陥多動性障害, 学習障害を有した子どもたちは, 障害に応じた理解・配慮を受けることが難しく, 学校生活の場において不適応反応が出現しやすく, 周囲の不適切な対応によって孤立感や無力感が増大した結果, 不登校に至ることも少なくない. 不登校で受診する子どもたちにおいて, 発達障害の診断が行われる例はかなりの率に上る. 発達障害児の不登校ケースは, 集団生活における「心理的苦痛」の経験に注目する必要がある. さまざまな障害によって引き起こされる学習困難, 予定変更や特殊なイベントへの対応といった生活上の困難, 想像性の未発達に由来するコミュニケーション困難, 感覚過敏や注意転導に由来する環境適応上の困難, そして, いじめや嫌悪の対象といった迫害体験が積み重なり, 不登校に至る場合が多い. 本シンポジウムにおいては, 臨床現場から得られた不登校と発達障害の関係に関する知見と, 発達障害概念が不登校対策にもたらした新たな支援理念について述べた. |
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ISSN: | 0385-0307 2189-5996 |
DOI: | 10.15064/jjpm.50.8_771_1 |