II-3.カプグラ症候を呈した解離性障害の1例(一般演題,第111回日本心身医学会関東地方会演題抄録)

われわれは今回, 特に器質的な誘因をもたず, 解離性症状に合併してカプグラ症候として夫を「夫ではなく, 自分の父親である」と妄想的人物誤認を呈した症例を経験したため報告した. 症例:50代, 女性. X-2年頃より夫との折り合いが悪かった. X年9月, 夫と激しい口論をした後, 次女に電話したが逆にたしなめられ, 次女とも口論した. 翌日夫が帰宅すると「お父さん(自分の父)が来た」と言い, 夫を自分の父と誤認し, 次女に関するここ数年の記憶も欠落していた. 説明しても訂正不可能なため, 同日精神科を救急受診. 解離性障害として様子観察となったが, 改善得られず9月28日入院. 面談では「父親は...

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Veröffentlicht in:心身医学 2009/08/01, Vol.49(8), pp.935
Hauptverfasser: 澤谷, 篤, 中山, 菜央, 横田, 雅実, 石井, 民子, 成重, 竜一郎, 中尾, 泰崇, 藤波, 辰馬, 木村, 真人
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:われわれは今回, 特に器質的な誘因をもたず, 解離性症状に合併してカプグラ症候として夫を「夫ではなく, 自分の父親である」と妄想的人物誤認を呈した症例を経験したため報告した. 症例:50代, 女性. X-2年頃より夫との折り合いが悪かった. X年9月, 夫と激しい口論をした後, 次女に電話したが逆にたしなめられ, 次女とも口論した. 翌日夫が帰宅すると「お父さん(自分の父)が来た」と言い, 夫を自分の父と誤認し, 次女に関するここ数年の記憶も欠落していた. 説明しても訂正不可能なため, 同日精神科を救急受診. 解離性障害として様子観察となったが, 改善得られず9月28日入院. 面談では「父親は夫と違いよく話を聞いてくれた」という訴えも聞かれた. 入院当初は健忘と人物誤認以外は特に異常を認めなかったが, 支持的精神療法を継続したところ徐々に頭痛, 倦怠感や頭がまとまらない感じを訴えはじめた. 徐々に葛藤が表出することにより体調不良が現れたと考え, 第14病日頃に本人および夫と面談を行い, 「父は亡くなっており, 看病をしてくれているのは夫である」ということの直面化を行った. これにより激しい混乱と抑うつ, 不安焦燥の出現があったものの抗うつ薬と精神療法の継続により徐々に改善し, 人物誤認も解除されたため第41病日自宅退院となった. 考察:解離性健忘とともに葛藤対象である夫に対象同一性の障害, 相手が父親であってほしいという願望充足的な機制がうかがえた.
ISSN:0385-0307
2189-5996
DOI:10.15064/jjpm.49.8_935_2