3.摂食障害と診断された食道アカラシア2症例の検討(一般演題,第65回日本心身医学会東北地方会演題抄録)

背景:摂食障害では, 嘔吐と体重減少を主訴とする患者は少なくない. またこの症状は食道アカラシアとも共通する症状であり, 時に診断を誤ることが文献報告されている. 私たちは, 摂食障害と診断されていたアカラシア症例および摂食障害とアカラシアの併存した症例を経験した. 症例1:27歳, 女性. 18歳時に胸やけ, 食物の逆流, 嘔吐が出現した. 近医精神科で摂食障害の診断のもとに精神作動薬を処方されたが無効だった. 摂食時には大量の飲水で食物を胃内に流しこんでいた. 25歳, GIFで食物残渣を確認されたがそれ以上の検索は行われなかった. ライフイベントの後, 嚥下困難が増悪し摂食障害として当科...

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Veröffentlicht in:心身医学 2008/11/01, Vol.48(11), pp.978-979
Hauptverfasser: 青木, 勲, 町田, 知美, 町田, 貴胤, 森下, 城, 佐藤, 康弘, 唐橋, 昌子, 安達, 正士, 相模, 泰宏, 遠藤, 由香, 田村, 太作, 庄司, 知隆, 本郷, 道夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:背景:摂食障害では, 嘔吐と体重減少を主訴とする患者は少なくない. またこの症状は食道アカラシアとも共通する症状であり, 時に診断を誤ることが文献報告されている. 私たちは, 摂食障害と診断されていたアカラシア症例および摂食障害とアカラシアの併存した症例を経験した. 症例1:27歳, 女性. 18歳時に胸やけ, 食物の逆流, 嘔吐が出現した. 近医精神科で摂食障害の診断のもとに精神作動薬を処方されたが無効だった. 摂食時には大量の飲水で食物を胃内に流しこんでいた. 25歳, GIFで食物残渣を確認されたがそれ以上の検索は行われなかった. ライフイベントの後, 嚥下困難が増悪し摂食障害として当科紹介受診した(体重45kg, BMI 17.7). 身体イメージの歪み・肥満恐怖はなく, 食道透視および食道内圧検査でアカラシアと診断した. 拡張術により, 嚥下困難は消失し体重が増加した. 症例2:42歳, 女性. 26歳で結婚後に家族と対立があった. 30歳時, 食欲低下, 嚥下困難, 嘔吐が出現した. 摂食への恐怖から拒食となり体重は30kgに減少した. 摂食障害による体重減少の診断のもと, 複数精神科に頻回の入退院を繰り返していた. 経過中, 器質的疾患の精査は行われなかった. 42歳時, 体重減少(30kg), 全身状態悪化のため当科入院となった. 身体イメージの歪み・肥満恐怖を認めた. 悪化した全身状態と嘔吐が要因でカンジダ感染症を発症しDICに進展した. 嘔吐の精査のため, GIF, CT, 食道造影検査を行い, アカラシアの併存を診断した. 考察:2症例ともに発症からアカラシア診断まで約10年が経過していた. また, ライフイベントに伴い症状が出現あるいは増悪しており, 症状発現に心因の関与が推測されていた. そのため器質的疾患の十分な精査は行われなかった. 症例1はアカラシアの症状を摂食障害と誤ったものである. 症例2では, 摂食障害診断前のアカラシアが嘔吐・拒食を招き体重が減少していた. 身体イメージの歪み・肥満恐怖・家族内の葛藤があることから摂食障害と診断された. 摂食障害の症状としての過食・嘔吐はアカラシアにより修飾されていた. 嘔吐が原因と推測される慢性的誤嚥は感染症の温床となりカンジダ感染症, DICを併発した. 嘔吐と体重減少は摂食障害とアカラシアに共通の症状であり, 常に両者の鑑別には注意を要すると考える.
ISSN:0385-0307
2189-5996
DOI:10.15064/jjpm.48.11_978_2