30. SSRIによる人格変化の可能性について―SSRI投与後強い殺意が出現した2症例

目的:近年SSRIは心療内科・精神科などメンタル関連専門科にとどまらずプライマリ・ケア領域でも使用頻度の高い抗うつ薬となっている. その理由の1つとして, 従来の3環系を中心とする抗うつ薬に比べ, 有害作用の少ないことが挙げられている. そのため, 自殺関連事象や敵意・攻撃性を惹起するようないわゆるactivation syndromeなどの有害事象についてあまり論じられずに使用されているようである. 今回われわれは, SSRI投与開始にて強い殺意を抱き投与中止・変更を余儀なくされた症例を経験したので報告した. 症例1:50歳代, 男性. 心臓神経症, 強迫症状を主訴に当科受診し, fluvo...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:心身医学 2008, Vol.48 (9), p.821-821
Hauptverfasser: 小川慶太, 吉里恒昭, 丹生聖治, 乾明夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:目的:近年SSRIは心療内科・精神科などメンタル関連専門科にとどまらずプライマリ・ケア領域でも使用頻度の高い抗うつ薬となっている. その理由の1つとして, 従来の3環系を中心とする抗うつ薬に比べ, 有害作用の少ないことが挙げられている. そのため, 自殺関連事象や敵意・攻撃性を惹起するようないわゆるactivation syndromeなどの有害事象についてあまり論じられずに使用されているようである. 今回われわれは, SSRI投与開始にて強い殺意を抱き投与中止・変更を余儀なくされた症例を経験したので報告した. 症例1:50歳代, 男性. 心臓神経症, 強迫症状を主訴に当科受診し, fluvoxamine 25mg投与開始し, 50日目より近隣の子どもたちの遊び声がうるさい, 殺してやりたいと訴え, 71日目にイライラ感さらに増強した. 過去に患者につらくあたった人たちへ復讐してやりたいなどと訴えたためfluvoxamine中止し, 向精神病薬, 気分安定剤付加にてfluvoxamine中止29日後に焦燥感軽減傾向を示した. 症例2:30歳代, 女性. 慢性疼痛とNUDを主訴に当科受診し抗不安薬および3環系抗うつ薬により治療中であった. 3環系抗うつ薬をfluvoxamine 25mgへ変更直後より, 人を殺したくなったとの訴えが出現し, すぐにfluvoxamine中止し, 訴えは消失した. 考察と結論:SSRIは抗コリン作用の少なさからプライマリ・ケア領域でも使いやすい抗うつ薬のイメージが先行しているようであるが, activation syndromeが起こりうることを十分認識し, 自殺や傷害の要因となりうる可能性が認められた場合には早急に対応すべきであろう.
ISSN:0385-0307