心身症と行動療法 : 座長コメント(特別企画 : 心理療法-先達に聞く-,2007年,第48回日本心身医学会総会(福岡))

精神身体医学会と呼称されていた学会が, 心身医学会と改称される頃にかけて, 当時の九州大学心療内科の池見酉次郎教授と鹿児島大学第一内科の金久卓也教授との間での何年にもわたった論争があった. それは, 神経性食欲不振症の行動療法による治療の成功例を発表していた鹿児島大グループに対して, 池見教授は「行動療法で改善したということは, 神経性食欲不振症の周辺群であり, その中核群はとても行動療法などという表面的な対症療法では改善するはずがない. したがって鹿児島大学の扱っている症例は, 軽症の周辺群であろう」というものであった. 当時九州大学心療内科では, 当該ケースは精神分析によるアプローチが常識...

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Veröffentlicht in:心身医学 2008/08/01, Vol.48(8), pp.725-726
1. Verfasser: 松原, 秀樹
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:精神身体医学会と呼称されていた学会が, 心身医学会と改称される頃にかけて, 当時の九州大学心療内科の池見酉次郎教授と鹿児島大学第一内科の金久卓也教授との間での何年にもわたった論争があった. それは, 神経性食欲不振症の行動療法による治療の成功例を発表していた鹿児島大グループに対して, 池見教授は「行動療法で改善したということは, 神経性食欲不振症の周辺群であり, その中核群はとても行動療法などという表面的な対症療法では改善するはずがない. したがって鹿児島大学の扱っている症例は, 軽症の周辺群であろう」というものであった. 当時九州大学心療内科では, 当該ケースは精神分析によるアプローチが常識であり唯一無二のものとされていた. この論争は本学会ごとに毎年繰り返された. 当時の心身医学界および心理療法界では, 行動療法に対する認識は近年のものとは隔絶の観があり, 単なる対症療法でしかないと信じられていた.
ISSN:0385-0307
2189-5996
DOI:10.15064/jjpm.48.8_725