57. 高血糖恐怖により頻回の低血糖発作をきたした1型糖尿病の1例

症例:20歳, 女性. 主訴:頻回の低血糖発作. 血糖が高いと食事が摂れない. 現病歴:X-13年, 1型糖尿病を発症. 近医でインスリン2回打ちを導入され, 当初は両親が注射していた. X-10年, サマーキャンプを機にインスリン自己注射をするようになった. 以後HbA1c7~10%で推移し, X-9年にはインスリン4回打ちに変更された. X-4年6月糖尿病性網膜症の疑いがあると言われた後から合併症への恐怖が生じ, 食事を減らしはじめた. 同年10月, 初めて低血糖症状が出現, 以後徐々に低血糖発作の頻度は増加. 高血糖への恐怖から血糖値が200mg/dlより高いと食事がまったく摂れなくなっ...

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Veröffentlicht in:心身医学 2006, Vol.46 (5), p.404-405
Hauptverfasser: 藤原裕矢, 瀧井正人, 石堂考一, 河合啓介, 野崎剛弘, 久保千春
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例:20歳, 女性. 主訴:頻回の低血糖発作. 血糖が高いと食事が摂れない. 現病歴:X-13年, 1型糖尿病を発症. 近医でインスリン2回打ちを導入され, 当初は両親が注射していた. X-10年, サマーキャンプを機にインスリン自己注射をするようになった. 以後HbA1c7~10%で推移し, X-9年にはインスリン4回打ちに変更された. X-4年6月糖尿病性網膜症の疑いがあると言われた後から合併症への恐怖が生じ, 食事を減らしはじめた. 同年10月, 初めて低血糖症状が出現, 以後徐々に低血糖発作の頻度は増加. 高血糖への恐怖から血糖値が200mg/dlより高いと食事がまったく摂れなくなった. X-1年9月以後, 低血糖発作が1日4~5回生じ, 痙攣での救急搬入もたびたびとなった. その後も頻回の低血糖発作が続くため, X年6月, 当科を紹介され初診, 7月入院. 治療経過:入院時HbA1c4.0%, 糖尿病合併症なし. 高血糖恐怖に対し, はじめに患者が安心できる食事量の全量摂取および低血糖が生じない程度のインスリン注射量を実施させた. こういう設定の中で食事を全量摂取しても, 血糖値は予測に反してそれほど上昇しないことを患者は身をもって体験し, 恐怖感は消失していった. 段階的に食事量の増量およびインスリン量の調整を行い, 高血糖恐怖が消失するとともに空腹感満腹感のリズムも正常化した. しかしその後, 患者主導でインスリン量を調整させたところ頻回の低血糖が出現ていねいに血糖経過表を振り返り検討する面接を行い, 高血糖に対しインスリン量を多く設定するという患者の誤った認知, 行動の変容を促したところ低血糖発作は減り血糖値は安定した. 治療が進むにつれ, 入院当初認めていた糖尿病に対する否定的な言動は, 「糖尿病があっても自由に生きていきたい」という糖尿病の受け入れを思わせる発言に変化し, 患者は社会生活への意欲をみせていった.
ISSN:0385-0307