3.神経性大食症の治療法の検討 : 大うつ病性障害を合併した1例の治療経過からの考察(一般演題,第44回日本心身医学会九州地方会演題抄録(1))

症例:25歳, 女性. 主訴:過食, 意欲の低下, 抑うつ気分, 焦燥感, 外出恐怖. 現病歴:元来大柄であることを恥じていた. X-1年, 独居の開始や上司とのトラブルを契機に過食, 嘔吐, 体重増加, 意欲の低下, 抑うつ気分, 焦燥感が出現した. 太ったことの羞恥心がストレスとなり, さらに過食, 焦燥感が増悪した. X年3月25日当科受診, 同年7月に会社を退職して実家に戻ったが, 症状は持続, 体重は8ヵ月で17kg増加し, 人目を避けて家に閉じこもる状態となった. 精神的にも混乱し, 7月23日に入院した. 現症:身長168.8cm, 体重77.3kg(BMI27.1kg/平方メー...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:心身医学 2006/04/01, Vol.46(4), pp.333-334
Hauptverfasser: 石堂, 考一, 藤原, 裕矢, 河合, 啓介, 野崎, 剛弘, 瀧井, 正人, 久保, 千春
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例:25歳, 女性. 主訴:過食, 意欲の低下, 抑うつ気分, 焦燥感, 外出恐怖. 現病歴:元来大柄であることを恥じていた. X-1年, 独居の開始や上司とのトラブルを契機に過食, 嘔吐, 体重増加, 意欲の低下, 抑うつ気分, 焦燥感が出現した. 太ったことの羞恥心がストレスとなり, さらに過食, 焦燥感が増悪した. X年3月25日当科受診, 同年7月に会社を退職して実家に戻ったが, 症状は持続, 体重は8ヵ月で17kg増加し, 人目を避けて家に閉じこもる状態となった. 精神的にも混乱し, 7月23日に入院した. 現症:身長168.8cm, 体重77.3kg(BMI27.1kg/平方メートル), 焦燥感強く, 不安様顔貌. 理学的所見:特記すべき事項なし. 経過:体重, 体型へのとらわれが強かったが, その背景にある問題の解決が必要であることを説明した. 1ヵ月と入院期間を定め, 安心して食べられる量(1,600kcal)を患者と相談のうえ決定し, 全量摂取を指示した以外は, 体型, 体重に関する訴えや食行動異常は積極的に扱わない方針とした. うつ病の治療として, 心身の安静と抗うつ薬(fluvoxamine100mg)を投与した. 規則正しい入院生活, 休養, 薬物療法により精神状態が改善した頃, 定期的な面接で, 過剰適応だった対人関係様式や抑圧的に対処するpersonalityなどの内省を促した. 体重, 体型へのこだわりは持続したが, 過食は消失, 抑うつ気分などの精神症状も著明に改善した. 退院後も良好な状態を維持している. 考察:周囲の期待を過剰に意識し, 「弱い自分, つらい自分」をみせないために強迫的に努力してきたが, 強いストレス負荷により破綻して過食, 嘔吐, 体重増加をきたし, さらにそれがストレスとなって増悪するという悪循環が形成されていた. 内面への気づきを促し, 主治医や家族に「弱い自分, つらい自分」をみせることができるようになることでこの悪循環を断つことが治療の中心となった. まとめ:神経性大食症の治療は, 食行動異常に焦点を当てた薬物療法や認知行動療法などが報告されているが, 確立したものはない. 合併する精神疾患を含めた当科での治療を報告した.
ISSN:0385-0307
2189-5996
DOI:10.15064/jjpm.46.4_333_3