3.DVによるPTSD患者に対するEMDR適用の試み(第25回 日本心身医学会中国・四国地方会 演題抄録)

EMDR(eye movement desensitization and re-processing:眼球運動による脱感作と再処理法)は, 1989年にShapiroによってPTSDや恐怖症に対する新しい治療技法として開発された. EMDRとは外傷体験の記憶を想起しつつ, リズミカルな眼球運動を行うことによりその記憶の生々しさを消し去ると同時に, 外傷記憶に付随する否定的認知を肯定的認知に修正していく一連の手続きのことである. 今回われわれは, 夫の精神的および身体的暴力(DV)によってPTSD症状を呈した患者に対して, マルチフィードバック療法によるセルフコントロールの獲得と, EMDRに...

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Veröffentlicht in:心身医学 2002/09/01, Vol.42(9), pp.621-622
Hauptverfasser: 吉村, 靖司, 志和, 資朗, 好永, 順二, 中村, 靖, 神崎, 昭浩, 和田, 健, 撰, 尚之, 森田, 幸孝, 佐々木, 高伸
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:EMDR(eye movement desensitization and re-processing:眼球運動による脱感作と再処理法)は, 1989年にShapiroによってPTSDや恐怖症に対する新しい治療技法として開発された. EMDRとは外傷体験の記憶を想起しつつ, リズミカルな眼球運動を行うことによりその記憶の生々しさを消し去ると同時に, 外傷記憶に付随する否定的認知を肯定的認知に修正していく一連の手続きのことである. 今回われわれは, 夫の精神的および身体的暴力(DV)によってPTSD症状を呈した患者に対して, マルチフィードバック療法によるセルフコントロールの獲得と, EMDRによる外傷記憶の再処理により, PTSD症状が改善した症例を経験したので報告する. 症例は55歳女性で, 結婚後夫の精神的および身体的暴力に曝され続け, 夫が他界した後も出来事の再体験, 外傷と関連した刺激の回避, 強い不安症状と過度な警戒心や驚愕反応などの覚醒亢進症状, 書字困難などの機能障害が持続的に認められた. 薬物療法とマルチフィードバック療法により, ある程度現実的な対処法が獲得され, 日常的な障害の程度は軽減した. しかし, 心的外傷と関連した刺激に曝されると, 時として強い不安症状と覚醒亢進や刺激の回避などの症状が残存したため, EMDRの適用を試みた. その結果, 心的外傷と関連した刺激に曝されても覚醒亢進反応が生じることなく, 出来事自体に対しても過去の出来事であると客観的に処理できるようになった.
ISSN:0385-0307
2189-5996
DOI:10.15064/jjpm.42.9_621_3