認知行動療法的アプローチが奏功した慢性下肢痛の1例

症例は76歳, 男性. 主訴は両下肢痛. 平成7年脊椎手術後から増強し, 神経ブロックや薬物療法によっても改善せず, 当科入院となった. 心理社会的には終戦後シベリアに抑留され, 帰国後社長にまでなるが, 平成6年会社を長男にゆずってから抑うつ的になっている. 入院後検査では器質的疾患の所見はなく, 硬膜外および腰部交感神経節ブロック, クロミプラミン点滴などを施行したが改善しなかった. ケタミンによるドラッグチャレンジテストを行ったところ, 偶発的にロシア捕虜時代の臨死体験を追想する結果となり, 認知の修正と再生へのエネルギーを得るきっかけとなった. これに合わせて認知行動療法的に疼痛行動を...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:心身医学 2001, Vol.41 (5), p.397-398
Hauptverfasser: 下荒神武, 西田慎二, 中井吉英
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:症例は76歳, 男性. 主訴は両下肢痛. 平成7年脊椎手術後から増強し, 神経ブロックや薬物療法によっても改善せず, 当科入院となった. 心理社会的には終戦後シベリアに抑留され, 帰国後社長にまでなるが, 平成6年会社を長男にゆずってから抑うつ的になっている. 入院後検査では器質的疾患の所見はなく, 硬膜外および腰部交感神経節ブロック, クロミプラミン点滴などを施行したが改善しなかった. ケタミンによるドラッグチャレンジテストを行ったところ, 偶発的にロシア捕虜時代の臨死体験を追想する結果となり, 認知の修正と再生へのエネルギーを得るきっかけとなった. これに合わせて認知行動療法的に疼痛行動を減少させる方向へ強化して慢性疼痛による苦痛を緩和し, 痛みと穏やかに付き合っていく姿勢ができた. この症例からは痛みの受容(=老いの受容)だけでなく, 老いてもなお再生へのエネルギーをもち得ることが感じられた.
ISSN:0385-0307