指定発言:都市勤労者における産業心身医療の実態と産業医の役割(変革期の産業 : 職場のストレスと産業心身医学)
目的 激動する社会経済状況の中, プライマリケアにおいても心身医療の需要は多く求められ, これらが臨床医のみではなく産業医にとってもその対処が重要な課題になってきている. 一方, 現在の産業医制度の中で心身医療を扱う専門家はごく一部であり, 社会の需要との格差と組織的なシステムの未熟さが問題になっている. 対象と方法 このような状況を踏まえて, われわれは都市部における産業心身医療の実態と産業医の役割について以下の調査を行った. (1)1997~1998年の1年間に当院心療内科を受診した112例(男性37例, 女性75例, 平均年齢34.9歳)のうち, 発症状況に職場の問題が関わっている51例...
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Veröffentlicht in: | 心身医学 2001/02/01, Vol.41(2), pp.134 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 目的 激動する社会経済状況の中, プライマリケアにおいても心身医療の需要は多く求められ, これらが臨床医のみではなく産業医にとってもその対処が重要な課題になってきている. 一方, 現在の産業医制度の中で心身医療を扱う専門家はごく一部であり, 社会の需要との格差と組織的なシステムの未熟さが問題になっている. 対象と方法 このような状況を踏まえて, われわれは都市部における産業心身医療の実態と産業医の役割について以下の調査を行った. (1)1997~1998年の1年間に当院心療内科を受診した112例(男性37例, 女性75例, 平均年齢34.9歳)のうち, 発症状況に職場の問題が関わっている51例を対象とし, 診断および問診票による発症状況の調査を行った. (2)一般企業82社(100~500名)に対して産業医に対するアンケート調査を施行した. 結果 51例のDSM-IV診断では, うつ病性障害(37.3%)が最も多く, 次いで適応障害(33.3%), 不安障害(17.6%), 身体表現性障害(9.8%), 睡眠障害(3.9%)であった. 職場における発症状況の調査では仕事量の増大および責任過重によるものが31.4%と最も多く, 次いで異動, 出向, 組織の再編成に伴うものが21.6%, 上司, 部下などの対人関係問題が21.6%, 仕事に関する限界感, 無力感15.7%, リストラや転職に関わるものが13.7%であった. またこれらと重複して家族内のトラブルや友人, 結婚などの個人的な問題も15.7%にみられた. 以上より臨床的にはうつ病を主体にした病態が大半を占め, 職場では仕事の量的, 質的過重が誘因となっていることが示唆された. 一方, 産業医に関するアンケート調査では, 産業医の業務に対して満足20.8%, 不満足58.3%, よくわからない20.8%であった. またメンタルヘルスに関しては, 必要を感じている55.9%, 感じていない29.4%, よくわからない14.7%という結果であった. さらにメンタルヘルスに関して産業医に相談した経験は, ある16.6%, ない83.3%であり, したことがない場合の内訳は, 必要がなかった35%, 産業医が専門外45%, 相談してよいかわからなかった20%という結果であった. 結論 これらの調査結果より, 多くの企業では産業医の業務は双方(企業と産業医)ともに認知されていない場合が多く, 特にメンタルヘルスに関しては, その専門性と組織的なラインのシステムの脆弱性が問題であると考えられた. 一方, 産業医も臨床の専門的知識のみで対応するといった従来の概念ではなく, 幅広い知識とネットワークをもった総合判断のできる専門家をさらに育成すべきであろう. |
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ISSN: | 0385-0307 2189-5996 |
DOI: | 10.15064/jjpm.41.2_134 |