講習会 1.トラウマと心身症
PTSDは精神症状, 身体症状を併せもつ疾患である. 19世紀に近代的精神医学によってはじめてトラウマヘの反応が捉えられた時から, 多彩な身体症状が記述されてきた. PTSDは1980年にDSM-IIIに登場した概念であるが, 第一次世界大戦後のエイブラム, カーディナーの戦闘神経症の研究がPTSDの原形を作ったといえる. カーディナーは生理学的な反応を非常に重視してきた. 運動, 感覚の麻痺, 食欲不振, 嘔吐, 下痢, 睡眠障害, 過剰な驚愕反応などは, トラウマヘの急性反応期には臨床場面でよく観察される症状である. また, 長期にわたる反復的トラウマ(虐待など)を受けた患者にも, 疼痛,...
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Veröffentlicht in: | 心身医学 1999, Vol.39 (1), p.86-87 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | PTSDは精神症状, 身体症状を併せもつ疾患である. 19世紀に近代的精神医学によってはじめてトラウマヘの反応が捉えられた時から, 多彩な身体症状が記述されてきた. PTSDは1980年にDSM-IIIに登場した概念であるが, 第一次世界大戦後のエイブラム, カーディナーの戦闘神経症の研究がPTSDの原形を作ったといえる. カーディナーは生理学的な反応を非常に重視してきた. 運動, 感覚の麻痺, 食欲不振, 嘔吐, 下痢, 睡眠障害, 過剰な驚愕反応などは, トラウマヘの急性反応期には臨床場面でよく観察される症状である. また, 長期にわたる反復的トラウマ(虐待など)を受けた患者にも, 疼痛, 消化器症状などを始めとする多彩な身体症状がみられる. ただしこれらの身体症状が現在のDSM-IVの診断基準において十分に捉えられ整理されているとはいいがたい. 感情の麻痺(mumbing of emotion)は急性期にも慢性期にも広くみられるトラウマヘの反応であり, 解離の一形式と考えられるが, 診断, 治療のうえでも重要な症状である. またこの症状が, 患者の適応状態をさらに悪化させることも多い. ホロコーストの生存者の研究を行ったクリスタルは「アレキシシミア」が慢性のトラウマを受けた人の心身症状の中心にあると述べた. 感情麻痺の症状をもつ事例をあげ, 急性反応における麻痺, 慢性反応における麻痺と心身症状について報告した. |
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ISSN: | 0385-0307 |