EUS-FNAにて診断しえた膵原発悪性リンパ腫の1例
超音波内視鏡下穿刺吸引法(以下EUS-FNA)は新しい組織診断法であり, とくに消化管粘膜下腫瘍や膵病変, 縦隔リンパ節病変の組織採取に有用であることが報告されている. 今回我々は, EUS-FNAにて診断しえた膵原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する. 77歳, 女性. 主訴:胸部つかえ感. 家族歴:特記すべきことなし. 既往歴:1年前, 胆石にて胆嚢切除術. 10年来糖尿病加療中. 現病歴:2週間前より嚥下時の胸部つかえ感を覚えるようになり, 食欲も低下した. 近医にて胸部単純X線写真上, 心陰影の拡大と縦隔腫瘤を疑われ, 精査加療目的で当院へ紹介入院となった. 入院時現症:血圧11...
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Zusammenfassung: | 超音波内視鏡下穿刺吸引法(以下EUS-FNA)は新しい組織診断法であり, とくに消化管粘膜下腫瘍や膵病変, 縦隔リンパ節病変の組織採取に有用であることが報告されている. 今回我々は, EUS-FNAにて診断しえた膵原発悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する. 77歳, 女性. 主訴:胸部つかえ感. 家族歴:特記すべきことなし. 既往歴:1年前, 胆石にて胆嚢切除術. 10年来糖尿病加療中. 現病歴:2週間前より嚥下時の胸部つかえ感を覚えるようになり, 食欲も低下した. 近医にて胸部単純X線写真上, 心陰影の拡大と縦隔腫瘤を疑われ, 精査加療目的で当院へ紹介入院となった. 入院時現症:血圧114/62mmHg, 脈拍98/分, 整. 眼瞼結膜に貧血なし, 眼球結膜に黄疸なし. 心音, 呼吸音正常. 腹部平坦, 軟, 肝・脾・腫瘤触知せず. 表在リンパ節触知せず. 浮腫認めず. 入院時検査成績:尿蛋白(-), 尿糖(3+), 血液検査RBC352×10 4/mm3, Hb11.2g/dl, Ht31.4%, WBC4500/mm3, 血小板26.0×10 4/mm3, 生化学検査TP6.8g/dl, 総ビリルビン0.5mg/dl, AST76IU/l, ALT27IU/l, LDH2406IU/l, ALP205IU/l, 膵型アミラーゼ190IU/l, CRP0.94mg/dl, glucose102mg/dl, HbA1c8.1%, BLTN13.2mg/dl, Cr1.0mg/dl, Na142mEq/l, K4.7mEgQ, C1105mEq/l, 可溶性IL-2レセプター1270U/ml. 胸部単純X線写真:心胸郭比61%と著明な拡大. 胸部CT:上縦隔に大動脈弓を圧排する腫大した縦隔リンパ節と両側胸水および心嚢液の貯留. 腹部CT:膵は頭部から尾部にかけてびまん性に腫大し造影効果なし. ERCP:主膵管はびまん性に不整で一部狭小化. Gaシンチ:縦隔と膵に異常集積. EUS-FNA:経食道的に縦隔リンパ節生検を, 経胃的に膵体部と膵尾部から生検を施行. 病理組織診断:縦隔リンパ節, 膵ともに大型の異型細胞がびまん性に浸潤, CD10, CD20陽性, 最終診断は膵原発のdiffuse large B cell lymphoma. 臨床経過:治療はリツキシマブ併用THP-COP療法を施行. 治療開始後速やかに胸部つかえ感は消失しLDHは基準範囲内となった. 2クール終了後にはCT上, 縦隔リンパ節の腫大と膵病変はほぼ正常化した. 膵原発悪性リンパ腫は稀な疾患である. その診断は膵腫瘍として外科的に切除された標本でなされることが多く, 術前診断をしえたとの報告は稀である. 本症例ではEUS-FNAによって悪性リンパ腫の診断が可能であった. 本症例の原発は膵臓か縦隔か判断が難しいところであるが, リンパ液の循環経路を考慮し膵臓原発と診断した. EUS-FNAは経皮的アプローチが困難な部位の穿刺および十分量の組織採取が可能であり, 膵病変や縦隔リンパ節の生検に有用である. |
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ISSN: | 0468-2513 |